七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編1話 アルト視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編1話 アルト視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」続編1話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編1話 アルト視点

※続編とはちょっと違うかもしれませんが、続編1話はアルトの結婚前後のお話です


 アルトは異例ではあるが、結婚前からバチスタ公爵としてバチスタ領へ入ると、毎日がとにかく忙しかった。ウェリーナの父である前バチスタ公爵がほとんど人任せにしていた仕事の把握、南部騎士団の騎士団長としての仕事、そして結婚式の準備。寝る時間も短くしているのに、やることがありすぎる。

 問題も山積みで、前公爵が他人に任せっきりにしていた仕事は、前公爵が知らぬ間に横領や不正などが横行していた。また屋敷の中も前公爵が好き放題にしていたため、荒れた部分もある。そして使用人も信用ならないものが多く、屋敷の備品を勝手に持ち出したりしていた。そういった使用人を全て解雇するとキリがないので、反省の度合いなどを考えて対処したが、結局屋敷の使用人半分以上を辞めさせることになってしまった。屋敷の修繕などもあり、アルトは少しイライラとしていた。

 そんなこんなで忙しい日々を送って一ヶ月が経過したころ、婚約者のウェリーナと同じ屋敷に住んでいるのに、ほとんど会っていないことに気づいた。忙しすぎて、アルトには珍しく女性を放っておくなんてことをしてしまう。しまったと思い、すぐにウェリーナを呼び出した。

「ウェリーナ、会う時間をあまり作れなくてごめんね」
「いいのですわ! アルトさまが忙しいことは分かっておりますもの!」

 ウェリーナはいつものように強気に言うが、寂しく思っていたのは間違いない。アルトを見た瞬間、会えて嬉しい気持ちが漏れ出ていた。忙しいとはいえ、放っておいて悪かったなと思いながら、次の予定まで時間が少ししかないので、ウェリーナを抱き上げるとソファーに座って膝に乗せた。

「ア、アルトさま!? 急になんですの!」
「時間が短くて悪いのだけれどね、ウェリーナを愛でる時間に付き合って」
「め、愛でる?」

 かあっと顔を赤くするウェリーナが可愛い。ウェリーナの手をすくい甲にキスをすると、ウェリーナは嬉しそうにしている。

「もう少し会う時間を作りたいのだけれどね、時間がなくて食事も一緒に取れなくてごめんね。結婚式の準備、ウェリーナの方は進んでいると報告を聞いてはいるのだけれど、心配事はない?」

 ウェリーナの頬に手を添えると、ウェリーナはアルトの手に自分の手を重ねる。

「大丈夫ですわ。結婚式のことは、わたくしにお任せになって! アルトさまはやることがたくさんあるもの。わたくしが出来ることは頑張りますわ」

 ふむ。なかなかいい心意気である。それならば。

「ウェリーナ、頼みたいことがあるのだけれど、いいかな?」
「なんですの?」
「俺が使用人をかなり辞めさせたでしょう。使用人の質が悪いし、屋敷の改善にも手を付けたい。やりたいことは山積みなんだけれど、時間がなくてそちらにまで俺がしっかり関われないこともある。だから、使用人と屋敷の管理をウェリーナにお願いできないかと思ってる」
「管理を?」
「貴族の家庭にもよるけれど、女主人が使用人と屋敷の管理をするところは多い。ウェリーナも女主人になるわけだし、俺はウェリーナにはできると思うんだ」

 ウェリーナの頬にやっていた手を少しずらし、耳を触る。ウェリーナは一瞬びくっとした。

「もちろん、最初から全部お願いするわけじゃない。少しずつ俺と家令と執事とウェリーナでやり取りしながら、ウェリーナに覚えていってもらう。全部を完璧にする必要もない。間違えてもいい、失敗してもいいから、まずはやってみる。そして改善していけばいい。毎日その報告を、ウェリーナには俺にしてもらおうかな。そうしたら、会う時間もできるしね。どうかな? やってみる?」
「やりますわ! そうしたら、アルトさまの役に立てる?」
「もちろんだよ」

 やる気に満ちたウェリーナは、張り切って次の日からアルトとやり取りしながら管理を頑張るのだった。ウェリーナは思ったよりも飲み込みがいい。嘘をついたり策略を練ったりという才能はまったくないようだが、テイラー学園では成績が良かった方らしいし、元々皇太子の婚約者になるために努力をしていた子だ。何事も一生懸命で可愛かった。

 そして少しの時間ではあるが、毎日ウェリーナは約束通り報告に来る。その時間はアルトがウェリーナを甘やかしてあげられる時間でもある。

「うん、それはいいね。では明日からウェリーナの提案通りにしよう」
「はい!」

 いつものようにウェリーナを膝に乗せて報告を聞き、そして上手くいくとちゃんと褒める。褒めれば見えない尻尾をぶんぶん振っているのが見えて、可愛すぎて笑ってしまいそうになる。それを隠すようにアルトはウェリーナの口に口を近づけた。

 ウェリーナに逃げられないように頭を手で固定させ、口づける。そして潤んだ目を向けるウェリーナから口を離した。

「どうして……」
「今日はウェリーナをもう少し甘やかそうかなって思って」

 かあっと真っ赤になるウェリーナは、少し怒ったような顔をしていて、それがそそられる。

「甘やかされるの、嫌いかな?」
「そ、そんなことは言っていないわ」
「じゃあ問題ないよね。もう少しキスをしようか」

 今度はちゃんと宣言してウェリーナに口を近づけると、赤い顔をしつつも、逃げようとはしない。アルトはウェリーナの唇の感触を楽しむ。

 そんな少しの時間だけの甘い日々が続き、また別の日。その日は忙しくて執務室の机の前の椅子に座り、ウェリーナから報告を受けていた。ウェリーナはアルトの横に立ち、ウェリーナにもらった書類をアルトは見ている。

「うん、わかりやすく作られているね。これでいいよ」
「ありがとうございますわ!」

 書類をウェリーナに返すと、ウェリーナはアルトを期待の目で見ていた。まあ、言いたいことはわかるけれども。俺は甘やかさない。

「どうかした?」
「え? えっと、あの……」
「うん?」

 ウェリーナはもじもじするだけだ。

「どうしたの。言わないと分からないよ」

 アルトはウェリーナの手を取る。

「い、いつものは?」
「いつもの? 何だろう?」

 顔を赤くしウェリーナは小さく口にした。

「キ、キスを……」
「キスがどうかしたの?」

 アルトがニコニコと笑うので、ウェリーナはきっと目線を投げた。

「分かっていますのね!」
「え? 分からないよ。欲しいものは口にしてくれないと」

 強気な目線なのに、若干涙目になりながら、ウェリーナは勢いよく口を開いた。

「キスをしてくださいませ!」
「あははは! 可愛い!」
「アルトさまは意地悪ですわ!」
「その意地悪な俺が好きなのでしょう?」

 ぐっと息のつまる顔をしたウェリーナに、アルトは続ける。

「今日はウェリーナからキスしてほしいな」
「わ、わたくしから!?」
「ほら、どうぞ」

 ごくっと息をのむウェリーナは、それでも少しずつアルトに口を近づけてキスをした。そしてすぐに口を離すウェリーナに、アルトは不満げな顔を向ける。

「足りないなぁ。短すぎるよ」
「なっ! だ、だって!」
「さ、ウェリーナ。もう一度」
「そんなっ」

 涙目で見ても、免除はしないよ。そんな俺の有無を言わさない視線に、頬を赤くしたウェリーナはまた口づけをした。アルトはウェリーナの頭を手で押さえる。それから口を離したウェリーナの、ウルウルの瞳を向ける表情にぞくっとするのだった。結婚後に抱くのが楽しみである。

 そして、ついに結婚式がやってきた。ウェリーナは元々綺麗だけれど、この日はいつも以上に綺麗だった。戦争や前公爵の不正などいろいろあった。しかし公爵となりウェリーナの夫となったアルトは、忙しい日々に疲れることもあるけれど、公爵という椅子を面倒だと思っていた結婚前とは気持ちが変化していた。今後は妻のウェリーナを守って生きていく。そう思う気持ちが、心の内に納得できる形ですとんと収まっている。

 結婚式の夜。ウェリーナを抱きながら、思っている以上にウェリーナにハマっている自分に気づき驚いた。ウェリーナがアルトを好きなことは知っていたし、アルトもウェリーナを可愛いし好きだと思ってはいたけれど、いつのまにかそれが愛情になっていたのだ。だから「愛している」とウェリーナに伝える。泣いて嬉しがる妻がとにかく愛しい。

 そして結婚式から一ヶ月が経った。
 一緒のベッドで寝ていたアルトが、先に目が覚める。横を見ると、今にも起きそうなウェリーナが目を震わせていた。そして眠そうな目を開ける。しばらくそれを眺めていたアルトは、妻の唇にキスをする。

「おはよう、ウェリーナ」
「おはよう、アルトさま」

 それからキスを楽しんでいると、ウェリーナがアルトの肩を軽くたたく。ウェリーナの唇から口を離した。

「どうしたの?」
「どこを触っていますの!?」
「どこって、ウェリーナの太もも」
「もう朝なのですわよ!」
「知っているよ。でも今日の午前中はゆっくりできるしね。昨日の続きをしようか」
「もう使用人がやってきますわ!」
「ウェリーナの色っぽい声を聞けば、出ていくと思うよ」
「そんなの恥ずかしい! 嫌ですわ!」
「嫌じゃないでしょう。昨日だって、泣きながら俺を離さなかったくせに」

 話をする間も、アルトの手は太ももより上に移動している。潤んだ瞳を向けるウェリーナが可愛くて、絶対に止めてあげられない。

「お願いアルトさま! 使用人に聞かれるのは嫌なの!」
「……仕方ないな」

 アルトが一人ベッドを出ると、ウェリーナは寂しそうに小さく「あっ」と言う。そんなに寂しがらなくてもいいのに。せっかくの楽しい時間を俺が止めるわけがない。一度部屋を出て戻ってくると、ベッドに入る。

「使用人にこれからウェリーナを泣かせるから、部屋に入って邪魔しないでねって言ってきた」
「え!?」
「使用人に色っぽい声、聞かれなければいいんでしょう? では楽しもうか」
「違っ! そういう意味ではっ」

 すぐにウェリーナの口を口で塞いだ。あっという間にとろけそうな表情になるウェリーナを、昼まで甘く泣かせるアルトであった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。