七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 211話 最終話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 211話 最終話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」211話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 211話 最終話

 結婚式の二日前。シオンが帝都へ結婚式のためにザクラシア王国からやってきた。ザクラシア国王へ即位したシオンは、その数日後、周辺国にザクラシア前国王の崩御と新国王の即位を発表したのだ。それから初めての外遊ということで、側近のシャイロを始め、ザクラシア王国から高官が付いてきている。当然ザクラシア王国の一行として客間である宮殿の一角が与えられているのだが、シオンだけ抜け出して、普通にダルディエ邸に寝泊まりしている。シオンが国王になったなんて、嘘ではないかというくらい、いつものシオンである。私は一緒にいられるので嬉しいが。

 ちなみに、心の中で会話できるようになった件だが、色々と制約があるという。簡単に言うと、特別仕様なのは国王となったシオンだけのようだ。だからシオンと同じ天恵の人がザクラシア王国の国境を超えるやり取りはできないらしい。神とやり取りなんて、本当に大丈夫なのか心配になるが、ちらっと会ったシャイロが、シオンは規格外で困るとげっそりしていた。シオンは何かやらかしたのだろうか。とにかく、この件に関しては、神とのやり取りも問題ないとのことで、ほっとした。もちろん、距離は離れるのですぐに会うことはできないが、今までどおり話せるだけでも全然違う。

 帝都には両親や兄たちがすでに揃っていた。結婚前の最後の夜、両親や兄たち全員とたくさんの話をする。この日だけは兄たちの妻はみんな遠慮したらしい。本当に全員が揃うのは久しぶりだった。ダルディエ家は仲がいいので昔から談話室で揃ったりしていたが、最近はそれぞれの生活があり、全員が揃うのは難しい。だからすごく嬉しかった。

 次の日が早い私は、早く寝ることとなり、結婚前最後の添い寝はシオンとなった。ザクラシア王国は遠いため、これから会う機会が減るからである。シオンとベッドに入りながら、口を開く。

「明日の結婚式は楽しみなのだけれどね、でも少しだけ、昔に戻れたらなっても思うの。さっきみんながいて嬉しかったから、なんだか寂しくなってきちゃった」
「泣くな。今日は泣いたら目が腫れるから、泣いたらダメって言っていなかったか?」
「ん、そうなんだけれどね……」

 泣いたらダメだと思うほど、涙が出てきてしまう。声も震えてしまい、なんだか駄目だな。

「明日怒られちゃうなぁ……」
「……カナンがどうにかしてくれるだろう。ほら、こっちに来い」
「うん……」

 シオンに抱き着き、横になる。シオンの服が私の涙で濡れていく。シオンの温かい体温が心地いい。

「寂しくなったら帰ってくればいい。あいつは、それを駄目とは言わないだろう」
「うん……」
「俺とは話せるようになったのだから、いつでも話しかけてこい」
「うん……」

 そうだ。結婚しても兄は兄だ。また会えるのだから。そう言い聞かせ、いつの間にか泣きながら寝てしまっていた。

 そして次の日の結婚式当日。まだ暗闇の中で動き出し、騒動の中、私はウェディングドレスを身にまとっていた。朝からやはり目が腫れてしまい、カナンが頑張ってどうにかしてくれたのである。さすが私の侍女。仕事ができる。

 私のドレスは純白であり、そのところどころが金糸で刺繍されており、すごく豪華である。私が少しだけデザインでお願いしたのは、スカートのふくらみを少なくして後ろを長く作ってもらった。スカートの後ろがすごく長いのでスカートを引きずって歩くのだが、当日はカイルが傍にいて支えてくれるので、多少スカートが長くても問題ないのだ。なぜスカートを長くしてもらったかというと、式の最後で民の前でのお披露目の際、民が見ている中、私たちは長い階段を上るからである。階段を上る間、民は私たちの後ろ姿を見ることになるので、長いスカートが後ろから見るとすごく綺麗に映ると思うのだ。

 結婚式が始まる。
 パパと一緒にカイルの待つところへ歩いていく。今日はいろんな行程があるのだが、この場にいるのは皇帝皇妃を始めとした皇室に近しい人物と私の家族親戚たちである。パパを見ると、パパは最後にぎゅっと私の手を握りしめ私に頷いた。そしてパパとカイルは一度目を交わす。その視線で何が交わされたのか分からないけれど、カイルはパパに頷く。それからパパは私の手をカイルへ移動させた。

 パパが離れていく。カイルは眩しそうに私を見て小声で言った。

「いつも綺麗だけれど、今日はとびきり綺麗だよ」
「ありがとう。カイルお兄さまもとても素敵よ」

 式の最後に書面にて名前を記す。

 グレイムアンルイスカイル・フレイム・ル・グラルスティール
 ミリディアナ・ルカルエム・ル・ダルディエ

 ――ここに婚姻を結ぶ。

 私はミリディアナ・ルカルエム・ル・グラルスティールとなったのだ。

 ちなみに、カイルの本名はグレイムアンルイスカイル・フレイム・ル・グラルスティールなのだ。皇室の人はみな名前が長いのです。カイルのパパはルイと呼ばれるけれど、本名はジョアリアムルデスルイ・フレイム・ル・グラルスティールですからね。

 カイルは普段カイルと呼ばれるが、書面なんかは全て本名の長いやつを記入しなくてはならず、いつも大変そうである。まあ、流れるように書いてはいるけれども。

 家族を見ると、嬉しそうに涙を浮かべるママの肩を抱いたパパが、感慨深い表情で私を見ていた。ジュードは号泣で、シオンはいつもの表情、そのほかの兄たちは皆笑っていて、家族の表情は違えど、皆からは祝福の気持ちが伝わってくる。嬉しいのと、今まで大切に育ててくれた両親と兄たちに感謝をする気持ちでいっぱいになる。涙ぐみながらカイルを見ると、握っていた手をぎゅっとしてくれて、カイルは笑みを浮かべた。そうだ、これからカイルと笑いあって幸せになる私の姿を、両親と兄たちに見てもらうのだ。それが一番、家族は喜んでくれると思うのだ。

 それからいくつかの行程を終え、民の前へのお披露目のために長い階段を上る。わぁっと喜びの歓声に周りの空気が揺れている。やはりスカートが長いので歩きづらい。カイルが支えてくれないと、絶対に転ぶ自信がある。しかし、やはり思惑通り、民から見える私のドレス姿は、後姿がとにかく綺麗に映っていたという。ダンスするのには向かないが、引きづるような長いスカートがウェディングドレスの流行りとなっていくのだが、それももう少し先の話である。

 民の前でカイルと並んで手を降り、お披露目をする。再び、民から祝いの大歓声で空気が揺れる。

 それから衣装を替え、各国の王侯貴族や国内の貴族たちの集まる盛大な祝賀会が行われ、やっと解放されたのは夜も深まった頃。カナンを含む侍女たちに服を脱がせてもらい、ゆっくりとお風呂に入る。ちなみに、カナンは皇太子妃の侍女として正式に採用されている。皇室に雇われる侍女は試験もあって大変なのだが、カナンの努力の結果、無事私の侍女として採用された。結婚後も付いてきてくれるカナンには感謝である。また、アナンも引き続き私の護衛として雇われる予定ではあるが、まずは近衛騎士になる必要があり、近衛騎士にはなったのだが、皇太子妃担当となるまではもう少し時間がかかるという。

 お風呂でついウトウトしていると、いい頃合いに起こされた。いつの間にか体中がぴかぴかである。お風呂を上がり、髪の毛を手入れしてもらいながら、チョコレートを口に入れられた。

「チョコレート?」
「妃殿下は本日ほとんど食事ができておられないでしょう。糖分不足になります。あと二、三個は食べてくださいね」
「カナン、ありがとう。美味しいね、これ」
「今日のために作りました」
「……カナンの手作りなの? すごいわ」

 カナンはどこを目指しているのだろうか。もともと凝り性であるし、完璧主義ではあるが、戦争以降、磨きがかかっている気がする。

 それから準備が終わると、寝室に向かう。すでにカイルが部屋にいた。小走りでカイルに近づくと、カイルは私を抱き上げる。今日からカイルと二人で寝るのだ。カイルは私の口に軽くキスをする。

「やっと二人になれた。疲れているでしょう」
「少しね。さっきお風呂でウトウトしてしまったわ」
「今日は寝ないで欲しいな。これからやっとミリィを抱けるから」

 カイルはすぐこういうことを言うのだ。恥ずかしくて顔が熱くなる。

「……分かっているわ。さっきカナンがチョコレートをくれたの。きっとまだ寝られないだろうからって、くれたのだと思うの」
「さすがカナンだなぁ。分かってる」

 さすがに私だって、これから何をするのか分かっている。カイルとの婚約期間の一年間で、心づもりはできているつもりなのに、今は緊張でどうにかなりそうだ。

「緊張しているね? ドキドキがすごく聞こえる」
「うー、落ち着こうとしているの。でも結婚式以上に緊張する」
「ふふ、可愛いな。でもごめんね、今日は止めてあげられないから」

 カイルは私をベッドに降ろした。時々一緒に寝ていたカイルの、よく見る光景なはずなのに、いつもしない緊張でいっぱいいっぱいだった。

「緊張はするけれど、ミリィだって止めないで欲しいの。今日はカイルお兄さまに抱かれたいから」
「……何で可愛い事言うの。ミリィは俺の理性を失わせるのが上手いな」

 カイルは噛みつくように口を口で塞ぐ。そして口を離し、熱い視線を向けて口を開いた。

「夜通しかけて、ミリィが誰のものか教えてあげる」

 それからカイルに熱を与えられ続け、その言葉通り、私はなかなか寝かせてもらえず、甘い甘い夜を過ごすのだった。

 私がカイルと結婚式を挙げた三日後。

 今日から皇太子妃としての公務が始まるため、皇太子妃用の執務室へやってきた時、ザクラシア王の一団が帰国するという知らせを聞いた。そのためシオンが挨拶に来たと聞き、シオンを迎え入れたところ、シオンだけでなくエメル以外の兄たちが一緒にやってきたのである。

「え!? みんないるー!」

 予想外の兄集合に嬉しくなっている私を、いつものようにシオンが抱き上げて、頬にキスをくれる。

「シオンはずっとダルディエ邸にいたんだよ。今日ザクラシアへ帰るからミリィに会いに行くと聞いたからね。俺たちもミリィの顔を見たくて一緒に来たんだ」

 そう言って、ディアルドが私の頬にキスをする。

「ありがとう、お兄さまたちに会えて嬉しい!」

 バルトとアルトがそれぞれ私の左右の手をとって指にキスをすると、口を開いた。

「カイルさまとの結婚生活はどう? カイルさまに意地悪されたりしていない?」
「え? ううん? カイルは優しいもの。大丈夫よ」
「……カイルさまを呼び捨てにしているの?」
「あ! えっと……」

 顔が急に熱くなる。カイルが呼び捨てにしてくれと、お願いしてきた結婚式の日の夜を思い出してしまった。

「そ、そうなの。カイルが呼び捨てにしてほしいって……」
「……どうしてそれで顔を赤くするの?」
「え!? あ、赤いかな!? 何もないよ!?」

 なんでそこを突っ込んでくるのかな!? 兄たちの笑顔が怖い。

「……全員集合ですか」

 カイルがいつのまにか私の執務室にやってきていた。カイルの執務室と私の執務室は隠し部屋と通路で繋がっているのである。カイルの後ろにはエメルが立っている。

「これはこれは、カイルさま。ミリィに会いに来たのですよ。もちろん問題ないですよね」
「……もちろん」

 ジュードの笑顔に笑顔で答えるカイルを見ながら、カイルを含めた七人の兄たちと、結婚してもこういう温かい時間を一緒に過ごせることに嬉しくなるのだった。

【 おしまい 】


「七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」は今回が本編の最終話です。
明日からは続編(結婚前後の話)を5話と番外編(幼少期の話)を1話を、1日1話ずつ更新予定です。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。