七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 207話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 207話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」207話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 207話

 冬休みが開け、モニカはルーカスとの婚約手続き等があるため、帝都へ戻っていった。双子は二人共結婚のために近衛騎士を辞めた。アルトは結婚前からバチスタ公爵としての仕事があるため早々に南部へ行き、バルトもトリットリア侯爵から引き継ぐことが多いらしく南部へ行った。二人共仕事だけでなく結婚準備も忙しいのだ。
 私はというと、婚約手続きは書面でのやり取りなため、皇室とパパとがやり取りして無事終わった。次に待っていることは私とカイルの婚約お披露目である。社交界シーズンが始まる初春に行われることが決まり、私は準備のためにジュードや両親と帝都へ戻った。

 私とカイルの婚約については、皇室が公に発表したので、すでに社交界では周知の事実となっている。婚約お披露目会で着るドレスはママが張り切っていて、レックス商会の仕立て屋であるアンと入念に話し合っていた。カイルが着る服との兼ね合いもあるので、お披露目会までは時間がなくて、バタバタと過ごす。

 皇太子宮を訪ねた私は、カイルとお披露目に関する話をした後、エメルとソロソも交えて休憩という名のお茶会をしていた。その中で、最近少し気になっていることをカイルに質問することにした。

「カイルお兄さまは、ミリィと結婚する時に、ミリィ以外の女性もあと二人、妃を迎える?」

 カイルはギョッとした表情で、紅茶のカップを大きな音を立てて置いた。

「急に何の話!? 俺はミリィしか娶らないよ!?」
「で、でも皇族は第三皇妃まで娶ることができるでしょう? ……カイルお兄さまには、たくさん婚約者候補がいたのだし、もしかしたらミリィと同時に妃をあと二人迎えて、一緒に結婚式をしたりするのかなって」
「しないから! 俺はミリィがいればいいの! ミリィ以外はいらないから」

 必死に告げるカイルに、少しだけほっとする。ソロソはなぜか下を向いて震えているが、エメルは少し心配そうに私を見ている。

「本当?」
「本当!」

 カイルは席を立って私の側に近寄ると、両膝をついて私と目線を同じにする。そして私の両手を握りしめた。

「俺の妃はミリィだけだよ。ミリィさえ傍にいてくれれば俺は幸せなんだから」
「……じゃあ、エレノアさまは?」
「……エレノア? どうしてエレノア?」
「エレノアさまもミリィと一緒だもの」
「……何が?」
「カイルお兄さまの従姉弟」

 カイルは少し怪訝な顔をする。カイルを兄とは呼ぶが、実際には私の従兄妹で、エレノアともカイルは従姉弟だ。

「うん、エレノアとは確かに従姉弟だけれど……。――え!? もしかして、俺がミリィを好きなのは、従兄妹だからとか思っている!?」
「ううん、そうではなくて。エレノアさまは釣書を持ってこられていたでしょう。カイルお兄さまとも仲が良いもの。だから、エレノアさまがカイルお兄さまと結婚したいなら、カイルお兄さまが二人目の妃にする可能性もあるかなって。……でも、そうなったら、なんだかミリィは嫌だなって思って……」

 カイルの片手が離れ、何も反応がないなとカイルを見ると、カイルは片手で口元を隠していた。

「カイルお兄さま?」
「……ミリィがやきもち焼くのを始めて見た」
「……え!? やきもち!?」

 一気に顔が熱くなる。

「だってそうでしょう? ミリィは俺とエレノアが結婚してほしくないと思っているのだよね?」

 た、確かに。
 カイルが女性と親しく接することがほとんどないのに、最近エレノアと仲良かったことを思い出しては、ずっともやもやしていたのである。

「……うん、ミリィはやきもちを焼いてるのだわ」

 恥ずかしいけれど、この感情は間違いない。魅力的でカイルと仲のいいエレノア。もしかしたらカイルは私よりも、エレノアが良いと言うかもしれないと恐れているのだ。ちらっとカイルを見る。

「……カイルお兄さまは、ミリィがやきもち焼くと嫌いになる?」
「まさか! ミリィが可愛すぎてますます愛しくなるだけだよ」

 嬉しそうな表情のカイルは、私を促してソファーへ移動した。

「ミリィがやきもち焼いてくれるのは嬉しい。けれど、ミリィが不安になるといけないから。誤解を解かなくてはね」
「誤解?」
「俺がエレノアを妃にすることは絶対にないよ」

 いつの間にか、ソファーに移動した私の横にエメルが座って私のお腹に手を回している。どうしたのだろう? エメルはカイルがいるときは、私とカイルが話しているのを見ているだけ、というのが多いのに。顔を向けると、にこっと笑い返された。疑問には思いつつも、まあいいかとエメルの手に手を乗せてエメルに笑い返す。そしてカイルに意識を向けた。

「エレノアの母が俺の父の妹なのは知っているよね。叔母はエレノアが俺の妃になればと考えていたようだけれど、エレノアは元々俺に興味がない。エレノアには好きな男性がいるんだ」
「好きな男性?」
「噂が回っているから、わりと知られた話ではあるのだけれど。エレノアより十歳くらい年上の伯爵でね、結婚していたのだけれど、夫人とは死別されている。子供もいない。エレノアはその伯爵と恋仲にはなっていたみたいだけれど、両親に反対されてね。その時点で貴族たちには噂が回ってしまったから、両親は噂のあるエレノアと俺との結婚は諦めて、エレノアに別の婚約者を見つけてきた」
「そんな……」
「エレノアも簡単に両親の言いなりになる子ではないからね、婚約はしたものの、エレノアは婚約者と意図的に大喧嘩して、その婚約は破棄したんだ」

 ええ!? エレノア強い。

「意に沿わない婚約をさせられた両親に怒っていたエレノアだけれど、両親に反対されて簡単に引き下がった恋仲の伯爵にも怒っていてね。それから伯爵とは付き合ったり別れたり。その間に、エレノアは別の婚約者ができて破棄すること三回」
「三回!?」
「どうにも、恋仲の伯爵を焦らせたいみたいでね。エレノアは後妻でいいと言っているけれど、エレノアの両親はまだ反対している。だから伯爵は色々煮え切らないみたいだね」

 そんなエレノアの事情があったとは。

「で、俺にエレノアが釣書を持ってきているのは、その恋仲の伯爵をさらに焦らせるためだよ。俺の婚約者候補に名が上がっているとなれば、噂にもなるし、優柔不断の伯爵に決断を迫れると思っているようだね。まあ、そうはいっても、エレノアが婚約破棄のたびに俺に釣書を持ってくるから、釣書自体はエレノアから三度は貰っているけれど」
「ミリィ、つまりカイルさまは、エレノア嬢に当て馬にされているわけですよ」

 エメルがニコっと笑いながら声を出す。

「あ、当て馬」

 カイルを当て馬とは。一応皇太子なのに。あ、皇太子だからかな? 当て馬としては、申し分ない。エレノア恐るべし。

「……否定はしないが、なぜそれをエメルが言うんだ? というか、いつまでミリィにくっついている?」
「先日兄上たちに、カイルさまをミリィに近づけさせ過ぎるなと言われまして」

 近づけさせ過ぎるな? どうしてだろう。カイルの眉間にしわが寄っている。

「どうして急に? エメルやソロソもいるのだからいいだろう」
「……ミリィに抱くのが待ち遠しいと言ったと聞きましたが」
「……」

 まさか、その話がここで出るとは。顔が熱くなる。カイルは遠くを見るような目をした。

「……エメル、カイルお兄さまは結婚後のことを言っているのよ」
「分かっていますよ」

 分かっているなら、別にいいか。カイルはため息を付いた。

「……ミリィ、そういうことで、俺がエレノアを妃にすることはない。ミリィ以外を娶ることはないからね。心配しないで」
「うん。話をしてくれて、ありがとう」

 カイルは笑みを浮かべると、私に近づき頬にキスをする。

「あ! カイルさま!」
「別に俺の婚約者の頬にキスするくらい、いいだろう!」

 カイルが私を抱き寄せるので、エメルが後ろから私を抱き寄せようとする。そして二人は私を挟んで、わあわあと騒ぐのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。