七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 205話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 205話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」205話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 205話

 カイルが結婚の承諾を得に来た日。
 私はモニカにそれを報告すると、モニカは怒りに燃えていた。モニカに承諾も得ずにそんなことをするなんて! とさんざん怒っていたけれど、最後には落ち着き、私のミリィを大事にしないなら、速攻八つ裂きにしてやる! と息巻いていた。なんだろう、やっぱりモニカとカイルは発想が似ている。
 私もモニカも結婚が決まり、婚約して結婚の準備をしてとそれぞれが忙しくなるだろう。
 夜にモニカと寝る準備をしていたところ、エメルがやってきた。

「エメル、どうしたの?」
「少しだけいいですか? カイルさまがミリィと話がしたいと言っていて」
「今から? ミリィ、これからモニカと寝るのだけれど、明日では駄目かしら」
「明日はもう我々は帝都へ朝から戻るのですよ。ですから話す時間はないと思うので」
「え、もう戻るの?」
「はい。仕事がたくさん溜まっていまして」

 そういえば、戦争が終わり、たぶん帝都に戻ってすぐにこちらに来たのだろう。戦争で帝都を留守にした間、カイルは本来の仕事ができていなかった。それでも結婚の承諾が先だと、わざわざダルディエ領までやってきたのだろう。

「分かったわ。すぐにエメルの部屋に行くからお部屋で待ってて」

 今日しか話す時間がないのならと、モニカに今日は一人で寝て欲しいとお願いした。ぷんぷんしていたが、譲るのは今日だけよ! と最後には許してくれた。それからエメルの部屋へ行く。

「エメル、カイルお兄さま」
「ミリィ」

 カイルが私を抱き上げると、そのまま抱きしめてくれる。

「明日帰っちゃうのね?」
「うん。もう少しミリィの側にいたいのだけれど。仕事が待ってくれなくてね……」

 カイルは私を抱いたままエメルの隣の椅子に座り、私を膝に乗せる。私はカイルの頬にキスをした。

「無理してダルディエ領まで来たのね? 疲れているでしょう」
「ミリィを妃にするためなら、こんなこと何でもないよ。俺は今機嫌がいいしね」
「ふふふ。ミリィを妻にできるから?」
「そうだよ。今日は公爵が首を縦に振ってくれてよかった。一度では許してくれないと思っていたからね。何度も通う予定だったんだよ」
「ええ!?」

 カイルは私の頬にキスを落とす。

「あまり時間がないよね。少し話がしたいのだけれど、いいかな?」
「時間なら大丈夫。今日はこっちで寝るってモニカに言ってきたの」
「そうなの? それは嬉しいことを聞いたな。じゃあ……本来の話をする前に。今日はごめん。ジュードの話、ミリィは本当は気持ち悪く思っていない?」
「ジュードの話?」
「その……匂いを嗅いでるとか、髪を集めているとか……」
「ああ! あの時も言ったでしょう。お兄さまが匂い嗅いでるの知っていたわよ?」
「たぶん、無意識に嗅いでると思うんだ。ミリィの匂いが好きだから」
「ミリィを抱っこすると、お兄さまの鼻にミリィの頭が当たるからでしょう」
「……なんだか俺って変態っぽいな……」

 あ、落ち込んじゃった。

「気にしなくていいのに。ミリィ嫌じゃないよ? それにカイルお兄さまだけじゃないもの。アルトとかバルトもよく匂い嗅いでいるから」
「……嫌なこと聞いたな……」

 あれ、言っちゃダメだったかな。

「髪の毛はね、落ちたのは汚いでしょう。欲しいなら、今度カナンに目立たないところを切ってもらうから、それをあげるわね」
「ありがとう……でもね、髪は床に落ちたのを拾ってるんじゃないんだ。ミリィの服に付いてたのを拾っていただけで。ミリィの髪の毛キラキラして綺麗だから」
「そうなの?」
「……やっぱり、これも変態っぽいな……」

 カイルがますます落ち込んでいく。何でだろうな。切った髪より拾った髪の方が価値があるとか?

「ミリィ、カイルお兄さまを気持ち悪いなんて思ってないよ?」
「うん、本当にそれには感謝するよ。結婚しないって言われたらどうしようかと思った」
「言わないわよ。あの時約束したもの。ミリィはカイルお兄さまを愛しているから、結婚したいの」
「……ありがとう。俺も愛してるよ。俺のミリィは最高だなぁ」

 カイルは私を抱きしめる。カイルから風呂上りの良い匂いがする。カイルは私を離した。

「本題を話さなければね。さっきの話し合いでミリィの言葉が気になったから」
「何?」
「ミリィが俺に相応しくないとか。何もできないとか、役に立たないとか言っていたね」
「あ……うん。それはそうでしょう。ミリィは何もできないもの。ただの甘ったれの子供で……」
「そんなことはない。ミリィは勘違いしているよ。俺はミリィが何もできないなんて思っていない。今まで勉強だって体力づくりだって努力してきたじゃないか。皇太子妃としての仕事は多少あるけれど、ミリィならできるよ。何も最初から完璧にする必要はないのだから。俺だっていつもエメルやソロソの助けを借りて執務をしているんだよ。ミリィにもそういった人を付ける予定だし、そんなに気負わなくていいんだ」
「そう、かな?」
「そうだよ。それにミリィは分かってないな。ミリィが俺に会いに来てくれるだけで俺はやる気が出て仕事ははかどるし、ソロソは休憩できて喜ぶし、エメルは俺に少しだけ厳しくなくなるし。役に立ち過ぎているくらいだよ」
「本当?」
「本当だよ。ミリィがいるから俺は皇太子をやっていけているんだ。もうミリィがいないと、俺はうまく息ができない。ミリィが俺に相応しくないなんて、絶対にないんだ。だから俺を信じて。もうそんな悲しいこと思わないで」
「……うん」
「もしまだ不安があるなら、俺に言って欲しい。ミリィが一人で悩む必要はないよ」
「ううん。カイルお兄さまがずっと傍にいてくれるのでしょう。不安じゃないわ」
「それについてはね、少し考えがあるんだ。今のままでは皇太子宮とミリィの宮は遠くなりそうだからね……」
「ミリィの宮?」
「ああ、こっちの話だよ。ミリィはまだ気にしなくていい。できるだけミリィを傍に置くからね」
「うん?」

 何の話だ。首を傾げてしまう。
 どちらにしても、カイルのお陰で役に立っていない事実を少し軽減できた気がする。今後、大変なことは増えるだろうけれど、がっかりされないように頑張ろうと気合を入れる。

「話はまとまったようですね? 私は一度お風呂に入ってきますね」
「エメル、まだお風呂に入っていなかったの?」
「さきほどまで兄上たちに色々と絞られていましてね。疲れてしまったのでカイルさまに先に入るようお願いしたのです」
「……それについては、悪かったと思っている」
「もうこれで最後にしてほしいものですね。兄上に絞られるのは、私でも辛いのですからね。では入ってきますね」

 エメルは風呂場へ入っていった。

「お兄さまたちに絞られたって?」
「んー、ミリィは気にしなくていいよ。俺が受けるべきものだからね」
「そう?」
「ああ、ミリィを好きな兄が多すぎて困るなぁ」
「ミリィは嬉しいよ」
「ミリィはね……」

 カイルはため息を付きながら、私の頬に手をあてた。

「でも、やっとここまでこれた。それだけでも大きな進歩だ」

 カイルは私の口に少し触るだけの口づけをする。こういう軽いキスは私もだいぶ慣れた。だから私もお返しするようにカイルに口づけをする。

 二人で笑いあうと、カイルが口を開いた。

「ああ、早く結婚したいなぁ。ミリィを抱くのが待ち遠しい」
「……え!?」
「だってそうでしょう。ミリィは俺の子供が欲しいんだよね?」
「……」

 そういわれると、そうだ。そういうことしないと子供なんてできない。あれ、何でだろう、当然の話のはずなのに、なぜかそういうことが抜け落ちていた。あれ、つまり、私はいつもそんな話を堂々としていたのか!? 子供が欲しいとか、当然、することは決まっているわけで。
 ぎゃあああ! 恥ずかしい! 今頃恥ずかしくなってきた。

「あれ、真っ赤だ」
「カ、カイルお兄さま! ミリィ、そんなつもりで言ったんじゃないの!」
「ん? 早く俺に抱かれたいって?」
「言ってない言ってない! 違うのー!」
「違わないよ。俺を誘うんだもんなぁ。結婚まで我慢する俺の身にもなって」
「誘ってないぃぃ」

 本当に違うのに! なぜか楽しそうなカイルが解せない。でも子供が欲しいなんて言ったのは自分である。あああ、穴があったら入りたいとはこのことだ。

 カイルとわあわあ騒ぎ、エメルが風呂上りにそんな私たちを不思議そうな顔をして見ていた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。