七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 201話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 201話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」201話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 201話

 グラルスティール帝国の南部とウロ王国の開戦から二か月と少し。ついに終戦した。実際の戦闘行為は少なく、どちらの国の騎士にも死者は一人もいない。この戦いに勝ち負けを決めるなら、それは当然グラルスティール帝国の勝ちである。これから国同士の話し合いでその補償をどうするのか決めていくのだ。シオンが誘拐された王子と王女を助けたこともあり、ウロ王国としてはグラルスティール帝国に恩があるので、話し合いはいい方向に進むだろう。

 今回の南部の戦争はグラルスティール帝国にとって、もっとも被害の少ない終わり方ができたと思う。カイルが早くから南部騎士団を不信がっていたこと、不測の事態に備え、騎士を密かに配置していたこと。開戦してからも、カイルを始め、兄たちや影、たくさんの騎士たちが水面下で忙しく動き、働いたのだ。

 今回の黒幕といえばウェルドの第二王子だが、潜伏していた城から出てウェルドへ帰る途中で何者かに襲撃されたらしい。ウロに潜入させている影からの報告だが、たぶん第四王子の手の者が犯人だろうということだ。結局、その襲撃で第二王子は生死不明でかつ行方不明となっているという。

 南部騎士団に拘束されていたスヴェニア男爵の悪事が次々と明らかになっている。南部騎士団の騎士たちに麻薬を流行らせたこと、カイルの暗殺を企んで実行に移していること、そしてウェルドの第二王子と裏で手を組んでウェルド側に情報を流し、また南部の戦争を起こさせたことである。スヴェニア男爵については、その出自もあるため、今後帝都の宮殿の端にある牢へ入れられる予定だという。

 また南公、バチスタ公爵は南部騎士団の武器をウェルドへ横流しをし、さらに細かい悪事を重ねていたこともあり、公爵の爵位をはく奪し、国で一番過酷とされる監獄へ送られることが決まった。南部騎士団の騎士団長でありながら、職務を放棄している上に、戦争前に武器を横流ししており、戦争の最初で国を危険にさらしているのである。当然の結果だった。そして公爵の二人の息子も同罪であるため、同じ監獄送りである。次期バチスタ公爵はどうするのかだが、まだ決まっていない。公爵の正妻の子であるウェリーナを妻とする男性が次期公爵となる予定である。ちなみに、部屋で軟禁していたウェリーナの軟禁は解かれた。

 北部騎士団からやってきた恐竜と一角、そして三尾は、当初の予定通りには行かず、戦争に出ることはなかった。私としては、私が卵から孵した大事な子たちである。怪我もせずに無事でよかったと思っている。ただ南部騎士団へ来る時の檻で大変な思いをさせてしまっているので、北部騎士団へ連れ帰る際は船を使う予定だ。それなら檻から出せるし、辛い思いをさせずに済む。そして、終戦し、スヴェニア男爵も捕まったことで、私の身の危険への懸念もかなり薄らいだ。そのため、私も恐竜たちの乗る船と一緒にダルディエ領へ戻ることが決まった。

 カイルとエメルはもうしばらく戦争の後処理のために南部騎士団にとどまり、双子も同様で、私とシオンは冬の初めにダルディエ領へ恐竜たちと共に戻ってきた。私が帰った時は、戦争の地へ行った私のことをディアルドが少し怒ったけれど、強くは怒られなかった。私が怖がってシオンの背中に隠れたからかもしれない。

 それからは今まで命が狙われていたことが嘘のように平和な日々が続いた。ダルディエ領へ戻って十日が経った頃、モニカが帰還すると手紙をもらった。モニカが話があるというので、ダルディエ領へ泊まってもらうことにした。そして冬休みに突入したころ、モニカとエグゼがやってきた。久しぶりに会ったモニカに熱烈な抱擁を受け、しばらく一日中離れようとしないモニカと過ごす日々が続いた。エグゼは相変わらずナナに夢中である。手紙に書かれていた話がある、という内容をモニカと二人で入っていた温泉で聞いた時はびっくりした。

「婚約者がいるって言っちゃった!?」
「仕方がなかったのよ! 国を出られなくなりそうだったの!」

 モニカの国、トウエイワイド帝国は、前世でいうなら日本と中国を混ぜたようなイメージの国らしい。モニカの父が皇帝であるが、その妻が第七夫人までいるという。その中でモニカとエグゼの母は身分が低いらしい。母の身分が低いとその子も低く見られがちで、実際エグゼは他の兄弟にいじめられていたという。ただ、同じ母生まれのモニカだけは、生まれた時から溺愛されて育った。

「わたくしの場合はね、星の力が働いているの」

 星の力とは、グラルスティール風に言うなら、天恵の力のことである。そういえば、前にモニカは天恵を持っていると言っていた。モニカの場合、モニカの声が天恵にあたるらしい。しかもその力は血の分けた家族にだけしか効かないという。モニカの声を聞いた皇帝一家は、無条件でモニカを愛すのだという。そういえば、前に兄たちはモニカに跪くとか言っていたな。

 モニカを溺愛する家族たちは、私を探してグラルスティール帝国へ行くというモニカを、学園に通う間だけという約束で国から送り出したらしい。ところが、学園を卒業してみれば、またグラルスティール帝国へ戻るというモニカは家族からの大反対にあったという。溺愛するモニカがまたいなくなるのに難色を示したのだ。それで、モニカは仕方なく、グラルスティール帝国に好きな男がいる、結婚の約束をした人がいる、つまり婚約者がいるのだと家族に嘘を言ってしまったという。

「どうにかしないといけないの! 春になったら、それを確かめにお兄さまが来るって言うのよ!」

 それは一大事である。もし嘘がバレたら、モニカは国に連れ戻されてしまう。

「大丈夫よ、モニカ! 当てはあるわ!」
「本当!?」
「ルーカスがいるじゃない!」
「……ルーカス? 何でルーカス?」
「だってルーカスはモニカが好きだもの」

 あ、言ってしまった。ルーカスごめん。モニカは思ってもみなかったことを言われて驚いている。

「何を言っているの?」
「本当よ? 時々ルーカスとモニカとミリィで一緒に出掛けていたでしょう? あれはルーカスがモニカと仲良くしたいからだったのよ」
「ええ!?」
「恋するルーカスったら可愛いのよ! この前もモニカに会いたそうにしていたわよ」
「……なによ、そんなの、聞いていないわよ」

 少し恥ずかし気にぷいっと横を向くモニカが可愛い。

「モニカはルーカス嫌い? ルーカスって結構いい男だと思うのよ」
「……嫌いとは言っていないでしょう」
「だったら少し真剣に考えてみて? 将来の伴侶として。ルーカスは絶対モニカを大事にしてくれるわ。もしモニカが少しでも考えてくれるなら、ルーカスに手紙を出すわ。きっとモニカ会いたさにすぐにここに来ると思うわよ」
「か、考えておくわ」

 それから数日考えたモニカは、ルーカスと話がしたいと言ってきた。そこで私がルーカスに手紙を書くと、ルーカスは本当にすぐにダルディエ領までやってきたのである。手紙を読んですぐに家を飛び出してきたに違いない。

 ダルディエ邸の客間には、私とモニカとルーカスの三人がいる。エグゼはモニカのことになると煩いので、ナナを渡して別の部屋で遊んでもらっている。モニカはルーカスがいるのとは違う方向をぷいっと向いている。ルーカスはというと、モニカをちらちらと気にして見ていて可愛い。ちなみに、ルーカスへの手紙には、モニカが国から帰ってきて私の家にいるとしか伝えていない。

「ルーカス、遠い所を来てくれてありがとう。南部騎士団からラウ領へ戻っていたのね」
「うん。戻ったのはミリィより少し後くらいだよ。お前、結局最後まで誰にもダルディエ令嬢だとバレなかったな」
「うん。それは本当によかった。あ、でも北部騎士団の何人かにはバレたのだけれどね。まあ、彼らは知っているからいいの」

 と、さわりはこのあたりにしておいて。

「それでね、実はルーカスに謝らなければならないことがあるの」
「何?」
「モニカにね、ルーカスがモニカを好きだと言っちゃった!」
「……はぁ!? な、何で!?」

 真っ赤になったルーカスは私とモニカを交互に見ている。

「仕方がなかったの! ルーカスだって、モニカがルーカス以外の人と結婚するの、嫌でしょう?」
「……何の話?」

 ルーカスにモニカが家族に婚約者がいると嘘ついて戻ってきた話をする。春までに婚約者を見つけなければならないことも。

「春までに婚約者を作らなければならない……」
「そうなの。そこでね、ルーカスのことをモニカに話したらね、モニカがルーカスと話をしたいって言っていて。ね?」

 相変わらずぷいっと横を向いているモニカは、ちらっとルーカスを見た。

「わ、わたくしを好きだというのは、本当なの?」

 赤い顔で額に手をやったルーカスは、それでも真剣な表情をすると、席を立ってモニカの前に片膝をついてモニカの手を取った。

「そうだよ。俺はモニカが好きだ。結婚したいと思っている」

 モニカはルーカスを見た。

「いつもミリィに目を向けるモニカが可愛いと思っているよ。皇女然としたモニカが、ミリィの前だけは可愛くて優しくて、時々でいいから、その目を俺に向けて欲しいと思うんだ。俺のものになってくれないかな? 一生大事にするよ」

 ルーカスを見るモニカの頬はほんのりと赤い。今だけは私ではなくルーカスしか見えていないだろう。モニカはルーカスが握っている手をぎゅっとした。

「わたくしの一番はミリィなのよ。それでもいいの?」
「いいよ。ミリィのことが好きなモニカが好きなんだから」
「ミリィとすぐに遊びに行っちゃうわよ」
「いいよ。それで時々は俺のことも思い出してくれたら」
「何よ、バカね。欲がないんだから」
「モニカが時々でも俺を見てくれるなら、俺はそれだけで幸せなんだよ」

 モニカは顔をルーカスに近づけると、ルーカスの口に軽く口づけをした。ルーカスはカッと顔を赤らめる。

「言っておきますけれど! わたくしの国では、口にキスしたら絶対に結婚しないといけないのよ! 責任をとるのはルーカスですからね!」
「……うん! もちろん!」

 ルーカスは立ってモニカを抱き上げると、くるくると回り出した。

「きゃっ! ちょっと!」
「ごめん! 嬉しすぎて!」
「ミリィも嬉しいー!」

 私もルーカスに合わせてくるくると回る。嬉しい嬉しい! こんなにうまくいくとは思っていなかった。はっと私に気づいたルーカスは、回るのを止めた。

「そうだった、ミリィもいたんだった」
「あれ、もしかして二人の世界に入っていた? キスしたのも見てたよ! ……あれ、目が回る」
「ミリィ! バカ、お前まで回るからだ!」

 よろよろと地面に座り込んだ私を、ルーカスとモニカが慌てて介抱しだした。目は回るけれど、嬉しいから幸せだ。うふふと笑いながら気持ち悪くなる私だった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。