七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 200話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 200話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」200話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 200話

 ウロ王国へ侵入していたシオンが戻ってきた。シオンはウロ王国の上層部の人たちと協力し、捕らわれの王子と王女を助け出したという。そしてウェルドの黒幕だった第二王子も潜伏先から逃げたと聞いた。

 シオンたちがカイルの部屋で報告する間、他には見知らぬ人間がいないのでシオンに抱き着こうとしたら、体が汚れているからだめだと言われてしまった。私は気にしないのに、シオンが気にするなら仕方ないと、シオンの手だけ握っている。良かった。シオンを見る限り、怪我はしていなさそうに見えるし、元気そうに見える。

 シオンの報告が終わると、シオンは部屋で風呂に入ると言うのでついて行った。ちなみに、南部騎士団の城の最上階でカイルとその側近にあてがわれているのは、この執務室と隣の仮の料理を作る部屋、カイルの寝室、エメルとソロソの寝室、シオンとアナンの寝室、私とカナンの寝室である。それは表向きで、実際にはアナンとカナンが兄妹で同室、シオンが一人で部屋を使っている。私はシオンと添い寝したり、シオンがいない時はエメルが添い寝するので、その時はソロソの部屋からエメルはカイルの部屋へ移動するのだ。エメルと添い寝する時はカイルも一緒に寝ると言うからである。だから最近はずっとカイルとエメルと三人で寝ていたのだ。私はカイルとその側近にあてがわれた部屋しか、今は行き来が許されていない。

 カナンがシオンの部屋に風呂を準備してくれていた。カナンには結局私以外の世話も任せたような形になってしまって申し訳ない。私も料理では手伝えることが増えたのだが、それ以外となると厳しいのだ。それなのに、カナンは文句も言わずにやってくれている。一度謝ったら、私以外の世話は適当に手を抜いているらしいので問題ないと言われた。なるほど? だったらいいのかな? と思うことにしている。

 三尾ママと猫のナナが仲良く部屋で寝そべっている。
 風呂から上がったシオンの隣に座る。シオンに頬にキスをもらいながら口を開いた。

「怪我してない?」
「してない」
「良かった! もうウロには行かないよね?」
「もう用はないな」
「じゃあ、ミリィの近くにしばらくはいる?」
「ああ」

 嬉しい。ここのところずっと心の中でしか会話ができなくて、寂しかったのだ。シオンに抱き着くと、シオンは私を抱えて膝に乗せた。

「あのね、手のマッサージをカナンに教えてもらったの! シオンにもしてあげるね!」
「ああ」
「ずっと部屋から出ていないの。でもシオンがいるなら出てもいいよね? 恐竜や一角のところに行きたいのだけれど」
「明日連れて行ってやるよ」
「やった!」

 シオンの右手を取り、マッサージを始める。

「今回すごく大変だったのでしょう? ウロの王子と王女を助けたりしたって」
「大変ではない」

 そんなばかな。城に侵入したと聞いているが。シオンはいつものように何でもないように言う。

「あ、王女殿下を助けたのよね! ウロの王女ってどんな方だったの?」

 シオンが王女を助ける構図を想像し、これはロマンスが始まったのでは!? とちょっとウキウキする。危険な場所から助け出されれば、吊り橋効果のように恋愛感情を抱かれる場合も無きにしも非ず。まさかシオンから恋愛話が聞ける日が来るとは。

「どんな? ドレスを着ていたな」
「……それで? 他には?」
「髪が長かったような気がする」

 そりゃそうでしょうよ。この世界の女性はほとんどみんな髪は長いわ。

「もっと他にはないの!? 美しい方だったとか、綺麗な声だったとか!」
「顔も声も覚えていない」
「……」

 分かってた。うん、分かってた。ちょっと期待した私がバカだった。王女側がどうだったかは分からないが、シオンが他人に興味を抱くわけがない。そうだよね。そんなところがシオンらしい。

 恋愛話は諦めた。

「じゃあ、王子と王女が助けられたってことは、もう戦争も終わりよね?」
「たぶんな」

 やっと日常が戻ってくるということだ。嬉しい。

「今日からミリィはシオンと寝るね」
「え!?」

 いつのまにか扉が開かれて、そこにはエメルとカイルが立っていた。驚きの声を発したのはカイルである。

「エメルもカイルお兄さまもどうかしたの?」

 現在執務室ではないためルカの仮面を脱いでいる。だから殿下ではなくカイルお兄さま呼びだ。いつも用がある時はカイルがシオンを呼ぶのに、わざわざ来るとは珍しい。

「えっと……ウロ王国の件でシオン兄上に話があったのですが……」
「そうなのね」

 シオンはエメルの話を聞いているのかいないのか、私の肩を抱くと頬にキスをしだした。我が道をいくシオンらしい。カイルがいても関係ないようである。まあ、昔からそうだが。

「どうしてシオンと寝るの!?」
「だってシオンが帰ってきたのだもの。シオンがいる時はミリィはシオンと寝ていたでしょう。それに今はシオンから離れたくない気分なの」
「……」
「分かりましたよ、ミリィ。カイルさま、いったん戻りましょう」

 カイルを引きずるようにエメルが連れて行く。え、話は?

「なんだったのかしら?」
「さあな」

 私は首を傾げるしかなかった。
 それからカナンが紅茶とお菓子を持ってきてくれた。お菓子はカナンお手製の栗の甘露煮である。私は今日のおやつはすでに食べたので私の分はない。だからフォークで栗を刺しシオンの口元へ持って行くと、シオンが口を開けた。

「美味しい? カナンがミリィ用以外の栗にはお酒を入れたと言っていたわ」
「うん。美味い」
「ミリィはお酒入りは食べていないの。カナンが食べるなって言うから。はい、あーん」

 シオンはまた口を開ける。

「ミリィは酒入りチョコでも気持ち悪くなることがあるだろう。食べないほうがいい」

 そういいながら、栗の甘露煮が好きな味だったのか、シオンはペロリと全て食べてしまった。そしてシオンは欠伸をすると、ソファーに横になる。ウロ王国への偵察などで動きっぱなしだったのだ。疲れているのだろう。

「ミリィも寝るか?」
「うん」

 私は眠くはないけれど、シオンと一緒に横になる。シオンはすぐに寝息を立てだした。そのシオンの胸に耳を付け、その心臓の音を聞くとシオンが無事に帰ってきたことが実感できて安心するのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。