七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 198話 エメル視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 198話 エメル視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」198話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 198話 エメル視点

 シオンからウロ王国の王子と王女の居場所が分かったと連絡があってから五日。現在シオンや影たちは、王子と王女が監禁されている現場へ侵入するために情報収集に努めている。もうそろそろシオンから侵入についての連絡がありそうだと思っている頃、もう一つの懸念事項が急展開を見せた。アルトが南公の娘ウェリーナに秘密裏に会いに行こうとしていた、スヴェニア男爵を拘束したのだ。スヴェニア男爵をおびき寄せるための作戦が上手くはまったらしい。

 先日南部騎士の中にあやしい動きをする騎士がおり、捕えて尋問したところ、スヴェニア男爵の仲間であることも分かった。他にも仲間がいるようで吐かせているところだが、スヴェニア男爵を拘束したことで、今後色々と明らかになるだろう。
 今日そのスヴェニア男爵をアルトたちが南部騎士団の城へ連れてきて、牢に入ってもらったところである。その報告をするために、アルトと仲間の騎士がカイルさまの元へやってきている。

「先に戻っていて。俺はエメルに用事があるから」

 カイルさまへの報告が終わると、アルトは一緒に来ていた騎士にそう言う。騎士は了承して部屋を出て行った。アルトはエメルに用事があったわけではない。アルトに気づいたミリィがずっとうずうずしていたから、エメルを理由に残っただけだ。
 案の定、アルトはミリィを見て言った。

「ルカ、おいで」
「アルト!」

 小走りで抱き着いたミリィをアルトは抱き上げた。

「アルト、会いたかった!」
「俺もだよ。少しバタバタしていてね、来れなくてごめんね」
「ううん、いいの。でもいっぱい抱きしめて」
「いいよ」

 ぎゅうぎゅうに抱きしめて体を離すと、アルトに会えて嬉しいミリィが愛情が溢れたのか、アルトの顔中にキスの嵐をあびせる。

「あはは、待って待って。嬉しいのだけれど、このローブ邪魔だなぁ。カナンー、ルカのこれ取って」

 部屋の奥にいるカナンのところへ、アルトはミリィを抱き上げたまま移動する。
 隣の部屋から顔を出したカナンがミリィのローブを取った。

「アルトさま、ローブ取ったら衝立のこちら側にいてくださいね。誰が来るか分かりませんし」
「了解ー」

 ローブを取ってしまうと、ミリィが女だとバレてしまうからだ。衝立の向こうにはテーブルと椅子がある。その椅子を引く音がした。衝立でこちらからは見えないが、きっとアルトが座って膝にミリィを乗せているはずである。

 エメルはちらっとカイルさまを見る。うん、アルトとミリィを気にしている。カイルさまの顔が衝立の方を向いているのだ。

「ルカ、眼鏡も取ろうか。あーやっとルカをちゃんと抱ける。んー柔らかくて良い匂い」

 衝立で二人は見えないが、声だけは聞こえる。二人共くすくすと笑っている。

「アルトの匂いも好きよ。もっとぎゅっとして?」
「了解、俺のお姫様」

 ミリィとアルトの笑い声に、カイルさまの眉間にしわが寄っている。ミリィがエメルを構いすぎるとカイルさまはエメルにヤキモチを焼く人である。アルトに対してもヤキモチ中であろう。

「ねぇ、ルカを味わいたいんだけれど、ほっぺに噛みついていい?」
「だ、だめ! どうしてほっぺを噛もうとするのかな!?」
「美味しそうだからだよ。じゃあ他のとこならいい? 腕ならどう?」
「う、腕!? 腕……腕ならいいかな?」
「よし、じゃあ腕だしてー」
「痛くしないでね?」
「甘噛みするだけだよ」

 カイルさまが立ち上がり、衝立の向こうへ移動した。エメルもすぐに追いかける。衝立の向こうでは、今まさにミリィの腕に噛みつこうとしているアルトと、きょとんとしたミリィがカイルさまを見ていた。カイルさまはミリィの腕をアルトから離す。

「ミリィの肌に傷をつけるつもりですか」
「あれ、聞こえていました? 傷をつけるわけないでしょう。少し味見をするだけで」
「殿下、ミリィではないですよ、ルカですよ」

 冷え冷えとした視線を向けるカイルさまに、挑発的に笑うアルト、そして場違いな声を上げるミリィ。混沌としている。カイルさまの手からミリィの腕をやんわりと奪い返したアルトは、ミリィを抱きしめておでこにキスを落とした。

「あーあ、邪魔が入っちゃったね。もうしばらく味見はお預けかな。ルカ、帰ったらたくさん甘やかしてあげるよ。何かおねだりしたいこと考えておいて」
「ルカはアルトが一緒に過ごしてくれるだけでいいよ」
「そんなに俺といたいかぁ! 可愛い!」

 ミリィにたくさんキスを落とすアルトを、ジト目で見るカイルさま。喜ぶミリィの前では止めたくても止めれないのだろう。アルトはミリィを膝の上から降ろすと、カナンを呼んだ。カナンはミリィにローブを着せている。

「じゃあルカ。また会いに来るからね。この部屋から出てはだめだよ」
「うん」

 アルトはまたミリィを抱きしめると、カイルさまに笑顔を向けてから部屋から去っていった。

 その後カイルさまの不機嫌な雰囲気をミリィは感じ取ったのか、さっとエメルの後ろに隠れた。それを見たカイルさまは、ミリィの後ろに回ろうとするが、ミリィはエメルの腰を掴んでエメルごと回るのでカイルさまを拒否する形になる。

「……何で避けるのかな」
「避けてないよ!? ルカは今はエメルの背中にいたい気分なの!」
「ルカ、エメルの背中から出てきて。俺に抱きしめさせて」

 ミリィはそーとエメルの背中から顔をだし、カイルさまをじーと見ると、エメルの背中から出てカイルさまに抱き着いた。

「……寂しくさせちゃった? ごめんね?」
「ミリィがもう少し抱きしめてくれるなら寂しくなくなると思う」
「いくらでも抱きしめてあげる」

 ミリィはもうカイルさまに名前を訂正させなかった。エメルは小さくため息をついた。これでそのうちカイルさまの機嫌も良くなるだろう。アルトはカイルさまを挑発しないでほしい、とエメルは仕事に戻りながら思うのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。