七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 197話 ネロ視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 197話 ネロ視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」197話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 197話 ネロ視点

 ウロ王国のとある街。
 ネロはシオンとこの街を出ようとしていた。先ほどまでウロ王国の上層部と情報交換をしていたところだったのだが、前回の情報交換から大きい変化もなく、シオンはもっと南下してウェルド王国へ行ってみようと言っていたところだった。その時、明らかにこちらを見ていた視線に気づき、こちらが気づいたと同時に逃げたその男をシオンと追いかけた。すると、暗い道で男はいったん立ち止まると、こちらを振り向いた。

「グラルスティール帝国の方々とお見受けします。私の主人がお会いしたいと申しております。ぜひ私と一緒に来ていただけませんか」

 男が外套にしていたローブのフードを後ろに引くと、その顔が現れた。少し日に焼けたような肌が特徴的で、単純にそれを見ればウェルド王国の者だと認識できる。ウェルドの人間なのは分かるが、話している言語はグラルスティール語だ。ウロ語とグラルスティール語は大きく変わらないので会話できるが、ウェルド王国の言葉となるとかなり言語が違う。こちらに言語は合わせてきているのだろう。
 シオンは顔色も変えずに口を開いた。

「ウェルド人か。何の用だ」
「用は私の主人に聞いていただきたい。私はあなた方を招待することだけ仰せつかっております」

 男は薄く笑うとこちらの反応を窺っている。
 さて、どうする? 罠の可能性もある。

「坊ちゃん」
「ついて行こう」

 そう言うと思った。もう少し変化が欲しいところだったのだ。都合がいい。

 男は走り出す。それは俺のような影と同等の動きだ。さて、主人とは誰だろう。大物だといいなぁ。三十分ほど走っただろうか、さきほど俺たちがいた街の近くの街で、規模はこちらのほうが大きい。その街の高級宿の中に男は入っていく。高級宿だからか貴族などの身分が高い男女が客層のようだ。男は受付に寄らず、そのまま階段を上っていく。男と俺とシオンは服装が明らかに場違いであるし、客達は怪訝な顔や嫌そうな顔をしている。そんなこと構いなしに宿の廊下を歩いていくと、ある部屋の前に男は立った。

「お入りください」

 男は部屋の扉を開ける。その部屋に俺とシオンは入室し部屋の奥へ進むと、そこには男が女を三人侍らせて椅子に座っていた。

「おお、来たようだな。お前たちは隣の部屋へ行っていなさい」
「はーい!」

 男が女たちに告げると、女たちはきゃっきゃと楽しそうに隣の部屋へ消えていく。男は見たことのある男だった。グラルスティール帝国の宮殿で行われた宮廷舞踏会にいた人物。ネロも隠れて侵入していたので知っている。
 シオンがその男の名を口にする。

「……アフレイム・フロウ・ライーナ・ウェルド。ウェルド王国第四王子か」
「ほう。私を知っているか。いかにも。私は第四王子アフレイム。お前の顔は見たことがあるぞ。私は人の顔を覚えるのが得意でな。確かグラルスティールの宮廷舞踏会で……」
「雑談はいらん。ウェルドの第四王子、わざわざ俺たちを呼んだ理由を言ってもらおうか」
「お前、せっかちだと言われぬか?」

 第四王子はシオンの物言いに怒った風でもなく、使用人に酒を持って来させた。

「お前たちも飲むか?」
「いらん」
「そうか。私は遠慮なく飲むぞ」

 第四王子は酒を美味しそうに飲む。

「お前たちがこちらの動きを探っている様子なのでな。私は親切にも教えてあげようと思ったのだよ。お前たちはグラルスティールの皇太子の子飼いだろう? かなり優秀と見える。私の子飼いは凄腕揃いが自慢なのだが、お前たちに近づかれて隠れるので精いっぱいだったと言っていたぞ。どうだ、そちらの皇太子ではなく、私につかんか?」
「……まさか、それが俺たちを呼んだ理由だと言うつもりか」

 おっとシオンがピリッとしている。

「嫌か? まあよい、ついでの勧誘だよ。そう怖い目をするな」

 あはははと第四王子は笑って、また酒を口に含む。

「さて、では本題といこうか。今回の戦争、お前たちは私か第二王子ジェイコブのどちらかが黒幕だと思っているだろう。当たりだ。私ではなくジェイコブの方だがな」

 第四王子はにやりと笑う。

「ジェイコブは他国同士を戦わせるのが好きでな。私は自分が戦う方が楽しい。戦争するなら、相手の大将を引きづりだして恐怖の顔をさせるほうが面白いと思わぬか? ジェイコブとはとことん好みが合わなくてな。女も酒も戦い方も」

 第四王子はまた酒を口に含む。

「ただ、今回はジェイコブも勝手が違うようでな? ウロが戦争を開始して喜んだのもつかぬ間、すぐに後退とは。しかも、しまいには食中毒などと」

 くくく、と第四王子は笑う。

「ウロにおちょくられて、ジェイコブもさすがに頭にきているようだぞ。お前たちが興味があるかは知らんが、早めにウロの王子と王女は助けてやらんと殺されてしまうぞ?」

 第四王子が使用人に合図をすると、使用人が地図を持ってきた。
 地図はウロ王国がメインに書かれており、その西の街に印がされていた。

「ジェイコブは今そこにいる。ウロの公爵家の領でその城は現在ジェイコブの兵ばかりとなっている。ウロの騎士服は着ているがな。そこの公爵家の家族を人質に取り、公爵はジェイコブの言いなりだ。そこに王子と王女もいる」
「……なぜそれを俺たちに教える?」
「どうせ予想はしているのだろう。私たちは後継争い中でな。これ以上ジェイコブに成果を上げられても面倒なのだ」
「それでお前のために、俺たちに第二王子を引きずり降ろしてくれと?」
「いや、これはあくまでも親切心だよ。そうなれば面白いとは思うがな。俺は楽しいことが好きでね。なぜこの話をウロではなくお前たちにしたと思う? ウロは優等生ばかりで、どういう動きをするのか読めて面白くない。その点、お前たちは予想外の動きをする。今回私が教えなくても、そう遠くない時に情報は得ただろうしな」

 シオンはもう用はないと回れ右をすると、来た道を帰り出したので、俺もすぐに後を追う。その後ろから声が追いかける。

「ああ、そうそう。ジェイコブについては好きにしてくれていい。体も返してくれなくていいぞ」

 あはははは、という笑い声を聞きながら部屋を出た。そして閉まる扉を見る。あの第四王子、酒ばかり飲んでいたくせに、まったく隙が無かった。それに影が何人かいて、俺たちが第四王子に手を出せば俺たちも無事ではいられなかっただろう。
 高級宿の外へ出ると、シオンが宿の上を見上げた。その顔にはできれば殺したかったと書いてある。

「どうする、坊ちゃん」
「どうもこうも。まずは情報の事実確認が先だ」
「はいよ」

 俺とシオンは、もらった地図の場所へ向かうのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。