七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 196話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 196話

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」196話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 196話

 南部が開戦して一ヶ月と十日が経過したころ、南公の武器横流しの内容が調査の結果明らかになった。なんと、武器は秘密裏にウェルド王国へ売られていたのである。そこで大金を得ていたのは南公、そしてその息子二人も共犯だった。今回はその横流しが開戦時に騎士たちが戦う武器として足りなくなることを招いており、それも南公の狙いかと思っていたが、本人たちは金が欲しかっただけだと否定していたという。ただそのあたりの調査はまた別に回すとして、南公とその二人の息子は捕らえられた。

 そして南公の娘ウェリーナは父の悪事には関わっていなかったことは分かっているが、色んな事が明らかになるまでウェリーナはバチスタ公爵家の彼女の部屋からしばらくは一切出ることを禁じられた。つまり軟禁である。本来であれば南部騎士団で軟禁したいのだが、この場所が国境の戦争地ど真ん中で危険であるためバチスタ公爵家で軟禁となった。ただ理由はこれだけでない。行方不明のスヴェニア男爵がウェリーナに接触を図る可能性もあるため、彼をおびき寄せるためということもある。実際に、スヴェニア男爵をおびき寄せるための作戦が動いているらしい。その作戦が上手くいけばいいと思う。

 先日、南部騎士団の城の中でソロソが襲われた。ソロソは部屋の外に出る時は影は付けていないが護衛は付けている。ソロソはなんとかその護衛のお陰で事なきを得た。現在私たちの周りにいる影は一人しかいない。ウェルドやウロの動きを探る側に割いてしまっているからである。だからいつも影はカイルに張り付いており、私が部屋の外に出る時は最近は影を付けていなかった。それでも三尾がいるのであやしい気配は三尾が気付いてくれるのだが、ソロソの一件以来、私が部屋の外へ出ることは禁じられてしまった。カナンやアナンと食物庫へ行くのが唯一の楽しみだったのだが、仕方なかった。

 カイルを暗殺しようとする者にとっては、この南部騎士団の城は侵入しずらいという。皇太子宮と違って城の中には騎士が多い。城の最上階でカイルが今執務室として使っているこの部屋と廊下一帯は見張りがいて、下位騎士さえ簡単には近づけないようになっている。この最上階に来るのさえ暗殺者にとっては難しいだろう。襲われたソロソは南部騎士団の上層部と話があるために移動した時に襲われたのだ。つまり、この部屋にいれば、簡単には襲われないということだ。ソロソを襲ったものは、本当だったらカイルを狙っていたのだろう。けれどカイルは部屋からほとんど出ないので、カイルと親しい側近を狙うことによりカイルにダメージを与えることを意図しているのかもしれないのだった。

 現在執務室にはカイルやエメル、ソロソなどの気心知れた人物しかいない。カイルの側に今日のおやつとお茶を置いて、次にソロソにも同じものを置く。そしてエメルの側にも同じものを置くと、私はエメルの隣に座った。

「エメルは後で部屋を出る用事があるのでしょう? 護衛を連れて行ってね。警戒して行ってね」

 エメルのおやつ、マロンケーキを私はフォークですくうと、エメルの口元へ持っていった。

「はい。気を付けて行きますね」

 エメルは頷くと、マロンケーキを口に入れる。今日のマロンケーキはカナンのお手製である。いつのまにか食物庫の担当に栗を大量に注文していて、最近は栗づくしなのだ。あの狭い部屋でいろいろなことができるカナンがすごい。栗が大量に食べられて、私は毎日ご機嫌である。

「ルカー。この前襲われたの俺だよ? 可哀そうでしょ? 俺にもあーんしてよ」
「ソロソは黙れ。手が止まっているぞ。仕事をしろ」
「え、今お菓子で休憩の時間ですよね!?」

 カイルがじろっと睨むとソロソが慌てている。
 エメルと二人で笑ってしまった。
 もし側近が狙われるのなら、ソロソだけでなくエメルも危ない。この南部騎士団ではカナンやアナンも側近ではないにしろ、カイルと近しい人物だと見られている。だから、部屋の外に出る時はくれぐれも警戒するように言っている。

 早くスヴェニア男爵が捕まってくれればいいのだが、今どこに潜んでいるのだろう。まだ何か企んでいることは間違いないのだ。だから私たちも警戒を解くわけにはいかない。

 ウロへ侵入したシオンとは心の中で会話を毎日している。どうやらウロ王国の上層部と接触したらしい。シオンも警戒しているだろうが、ウロ側もシオンを警戒している。ただウェルド王国にいいようにされていることに頭に来ているウロ王国は、情報を交換してくれているという。

 いまだウェルドのどの王子が黒幕なのかは分かっていないし、王子や王女の居場所も分かっていないが、一応前進はしている。南部騎士団の城にいるカイルたちとも連絡を取りながら、ウロ王国と秘密裏に結束できる部分は結束しだしたのだ。つまり戦争の口裏合わせである。やはりウェルド王国側は、ウロ王国がグラルスティール帝国に戦争で勝たないと、王子と王女を返さないと言ってきているらしい。

 いつまでも戦わないで済ませることは難しくなってきている。そこで、今ウロ王国側の騎士たちは謎の腹痛が流行っていることになっている。出された食事で食中毒になっているという。食中毒の間は戦うことはできないとウェルド王国に告げているらしい。ウロ側でも騎士たちは今回の戦いの裏事情を知らない。だから、演技などできるはずがないので、軽い腹痛を起こすものを食事に混ぜたという。それをグラルスティール帝国側は知っているが、分かっていてウロを攻撃しない。攻撃しないことがウロにとってもこちらを信用することにも繋がるからだ。

 そのようにして、水面下ではいろいろと動いていた。シオンや影たちが必死に情報を探りに行って、なかなか帰ってこないが、事態が動き出したのは、開戦して一ヶ月と十五日が経過した頃だった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。