七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 194話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 194話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」194話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 194話

 南部騎士団へ入城して半月が経過した。

 開戦の初日以来睨み合いが続いていた戦争だったが、ついに二日前に再び戦闘があった。しかし妙なことに戦闘開始早々ウロ王国は後退し、その時の死人はゼロ。けが人はいるが、大けがほどではない。ウロは互いに傷つけあうことを恐れているような気がする。

 ウロの騎士としてウロに潜入させているものからの連絡では、ウロの中でも指揮官がすぐに後退を指示したことに困惑しているものが多いという。あまりにも不可解な状況であるため、一度シオンが影と共にウロへ潜入することが決まった。

 武器の横流しについては調査中で、確実な証拠が揃っていないのでバチスタ公爵を拘束するにはいたっていない。新たな情報として、どうやら南部騎士団の中で流行っていた麻薬の仲介をしたものの中にスヴェニア男爵の名前が上がっているという。ところが、スヴェニア男爵はここ数日行方不明となっていた。

 南部の戦争での戦闘は今のところ二回。けれど戦闘以外でも調査することは多く、みな忙しく動いている。

 バルトと再会した次の日、忙しい合間を縫ってアルトが会いに来てくれた。バルトから大方の事情は聞いたらしく、こっちに来てしまった私を怒ることはなかったけれど、バルトのようにあまり歩きまわってはだめだと念を押されてしまった。私ってそんなにウロウロしそうに見えるのだろうか。バルトのようにたくさん抱きしめてくれて、最近女の子を抱いてないから抱かせてと、バルトと似たようなことを言っていた。やはり双子である。

「皇太子殿下、お茶をどうぞ。あと口を開けてください」
「うん?」

 口を開けたカイルにチョコレートを入れた。カイルは誰かが気にしていないと食事も取らないのである。よくずっと集中していられるものだと感心するが、やっぱり糖分は大事だと思う。

「美味しいですか?」
「うん。甘い」

 笑うカイルに笑い返し、ふと部屋にカイルと私以外いないことに気づく。ふむ、今なら誰もいない。腰を曲げてカイルの口に横から口づけをした。驚愕の表情をするカイルから口を離す。

「……」

 手の甲を口に添えて顔を赤くしたカイルは、視線を外してしまう。

「いつも恥ずかしいのはルカなのに、今日は殿下が恥ずかしそうですね」

 この南部騎士団へ来てから、ときどき今のように誰も部屋にいないことがある。正確には三尾はいるのだが、そういった隙を狙ってカイルが口にキスをしてくるのだ。いつも驚いて恥ずかしい思いをするのは私である。だから今日はその仕返しのつもりだった。

 やはりカイルは自分からキスするよりも、されるほうが恥ずかしいようである。イタズラが成功した気分で、私は満足だった。

 戦争中とはいえ、最近カイルとの時間があるから、兄としてでなく男性としてカイルを意識する時間を自分の中で作るようにしている。カイルの気持ちに対して向き合いたいからである。

 カイルの私に対する熱い視線を知ってから、普段から時々そういう視線を私に向けていることに気づき出した。どうして今まで気づいていなかったのかが不思議なくらいである。よく考えたら、私は今まで好きな人を追いかけてばかりで、男性から好きになってもらったのは初めてかもしれない。

 日々意識することで、カイルを男性として好きだなと思う部分が増えてきた。ちゃんと自分の気持ちを理解したいので、少し口に出して整理してみるのもいいかもしれない。

「殿下、今誰もいないので、少しミリィに戻って話をしてもいいですか?」
「うん、いいよ。どうしたの、ミリィ」
「あのね、カイルお兄さま。ミリィはカイルお兄さまのミリィを見つめる時の熱い視線が好き。笑顔が好き。腕から見える血管が好き。綺麗な手や指が好き。ミリィを呼ぶ声が好き。それから……」
「待って、ミリィ!」

 カイルは手で顔半分を隠し、視線を私から外している。顔が少し赤くなっている?

「どうしたの?」
「どうしたのって……急にミリィが俺を口説くから!」
「え!? 口説いてないよ!? ミリィが最近気づいた、カイルお兄さまの男性として好きな部分を整理しているだけで!」
「……整理、なるほど。それは俺との結婚を前向きに検討してくれているということだよね?」
「う、うん。お兄さまとしてではなくて、男性として好きな部分にたくさん気づきたいと思って。今はまだ、お兄さまとして愛している部分が大きいような気がするから」

 カイルは私の両手を握った。

「うん、わかった。ミリィの気持ちをちゃんと聞くよ。続きを言ってみて」
「うん」

 それからカイルの好きな部分を話す私の言葉を、カイルは最後まで聞いてくれるのだった。

 その日の夜はシオンと一緒に添い寝である。私の膝にはナナが頭を乗せてくつろいでいる。シオンは風呂上りに、シオンの膝に乗せていた三尾の頭を撫でながら言う。

「明日から俺がいないからな。あまり部屋から出るなよ」
「うん」

 シオンは明日からウロ王国へ偵察に行くのだ。

「ナナの涙持っていく? 多めに持ってきたからあげようか?」
「いや、まだ前に貰ったやつがある」
「そう。無理しないでね。絶対帰って来てね」
「ああ」

 シオンは三尾の頭を下すと、ナナの頭も下して私を抱き上げた。ベッドに私を下すと、シオンも横になる。

「どれくらいで帰ってくる?」
「状況がわかればすぐに帰るけれど、状況が分からなくても十日後には一度帰ってくる」
「そんなにかかるの?」
「そんな顔をするな。連絡は入れるから」
「ウロって連絡取れるの?」

 ザクラシア王国では国境が境界線となっており、シオンとは心の中で連絡が取れなかったのだ。

「ウロは連絡取れる」
「じゃあ、毎日連絡してくれる?」
「分かった分かった。毎朝するから。もう寝ろ」
「ん」

 シオンは私の鼻を軽くつまんだ。そして私を抱きしめたまま寝だした。私も眠くなり、すぐに寝付いたのである。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。