七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 192話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 192話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」192話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 192話

 南部騎士団の城へ私たちが入城して二日が経過した。

「カナン、もうひっくり返していい?」
「そうですね、いいですよ」

 私は部屋の中で料理を手伝っていた。ここは南部騎士団のカイルにあてがわれている部屋の一つ。小さい部屋だが窓もあり、明るい。昨日ダルディエ邸から送っていた荷物が届いた。その中に鍋やフライパンなどちょっと料理ができる道具が揃っている。ちなみに塩や砂糖などの調味料は、ずっとカナンが背負っていた袋に入れていたという。

 こんなもの、いつの間に持ってくることにしたのだろうと思っていたら、以前、まだテイラー学園に入る前、シオンと旅行に行った時に野宿をしたことがあった。その時に私にちゃんとした食事をさせられなかったことがカナンは内心悔しかったらしい。再び野宿するようなことがある時のために、いつのまにお願いしたのか、ジュードに依頼して野宿料理セットを作っていたという。その料理セットをここに持って来ることにしたのは、南部騎士団の出す料理を信用していないからだそうだ。どこに暗殺者が潜んでいるか分からない。出される料理は毒見をすればいいのだが、遅効性の毒だと発見が遅くなるし、温かい料理を私に出せないのはカナンからすると屈辱らしい。

 そのため料理をする許可をカイルに求めると、カイルは自分たちのも作ってほしいとカナンに頼んできた。カナンは私の侍女なので私の食事しか作りません、とカナンはカイルに一度断っていた。けれど私が説得したのである。私も手伝うからと。それでもカナンは渋っていたが、私もここでやることがあるほうが助かる。ただカイルの隣でぼーっとしていても暇なだけだ。

 材料だけは南部騎士団からもらうことになっている。その貰った野菜を早速切ろうとしたら、カナンに止められた。私は包丁を持ってはいけないらしい。包丁くらい教えてもらえれば使えると言ったが、絶対に駄目だと言われた。仕方がないので、葉物の野菜を手でちぎったりとやることが少ない。

 この小さい部屋には水が使えるように、水の入った大きい陶器の壺が置かれている。またコンロ替わりに鉄の箱を三つ用意し、そこに炭を入れて火を起こしている。その上でフライパンや鍋を置いて、温かい料理を作るのだ。

 現在私が作っているのはホットケーキのような形のパンである。甘さはない。火を扱うのもカナンに禁止されそうになったが、そうなると私のすることがなくなってしまう。これは絶対させてくれと駄々をこねて私が勝ち取ったのだ。

「んー良い匂い」

 まずはパンを八枚作った。四皿に二枚ずつ乗せる。それから野菜を切ったサラダと、カナンが作ったスープ、そしてカナンが焼いた魚のソテーが献立である。

 隣の部屋に移動すると、衝立の手前側にテーブルがあり、衝立の向こう側でカイルたちが話をしていた。
 食事をテーブルに四人分乗せるとカイルたちに声をかけた。

「殿下、食事が四人分できましたよ。暖かいうちに食べてくださいね」
「ありがとう、ルカ」

 カイルたち以外にも騎士がいたので、私は私の役どころを演じる。私とカナンは双子で、カイルの世話係という役どころなのだ。アナンは護衛のままだが、城の中を私が移動する時にカイルが命令して付けている護衛、という役どころである。

 見知らぬ騎士が出ていき、カイルとエメルとソロソとシオンが席に着いた。

「ルカは?」
「殿下が先です。私たちの分はこれから作ります」

 とは言いながらも、良い匂いがするのでお腹が空いてしまった。小部屋に戻り、すぐにパンを焼き始める。次は私とカナンとアナンの三人分だ。あと荷物と一緒にやってきたナナの分のご飯も作らなくては。パンを焼いていると、残りの材料で作ったパンが三枚余った。隣の部屋にその余ったパンを持っていく。

「パンは三枚おかわりできますよ」
「俺が食べる」

 すぐにシオンが一枚とった。うーん、やっぱり二枚では足りなかったか。カナンが切った梨をデザートに持ってきた。

「梨には何もかかっていませんので、欲しい方は蜂蜜を好きなようにかけてください」

 私は床の上に皿を置いた。

「ナナ、お待たせ。お腹空いたでしょう。たくさん食べるのよ」

 ニャーとナナは返事をし、食事をしだした。うちの子可愛いなぁ。ナナの頭を撫でる。

 それから同じ部屋には知らない人がいないので、カイルが座っていたテーブルの端に三人分の食事を用意する。そして普段なら一緒に食事はしないカナンとアナンと共に食事を開始した。

「このスープ美味しい!」
「お嬢……ルカさまの焼いたパンも良い焼き加減ですよ」

 まだカナンはルカ呼びが慣れないらしい。私は小食なので、アナンの食事量を増やしたのだが、アナンはペロリと食べてしまった。やはり次からはもう少し作る量を増やそう。さてデザートに梨、と思っていると、カナンが私のところにだけ違う皿を置いた。

「何これ?」
「ルカさまには甘味が必要でしょう。マロングラッセの入ったクレープです」
「カナン! 嬉しい! 愛してる!」

 カナンはふっと笑う。

「えー、ルカだけずるい。俺にもマロングラッセくれない?」

 とうに食べ終えたソロソが物欲しそうな目でこちらを見る。

「ルカさまの分しか持ってきていません」

 カナンはそういうと自分たち用に切った梨を持ってきて座った。ソロソが小さく「冷たーい」と呟いたがカナンは無視である。

 その後、私たちは後片付けをした。といってもほとんどカナンがやったので、私は皿を拭いたくらいであるが。そしてカイルのそばに立った。

 あれから、結局戦況は動いていない。いまだ睨み合いのままで、騎士たちは交代で戦場に立つのだ。昨日中央騎士団からも援軍が来たが、まだ北部騎士団からは援軍は届いていない。遠すぎるし、先祖返りも連れてきているから遅くなっているのである。

 戦争中とはいえ、思ったよりもまだ平和ではあるが、これからどうなるか分からない。援軍や足りなかった武器も揃い出し、こちらの体制が中途半端だった最初は戦況が動かず助かったのだが、いまだにこうも動かないのも変である。友好国だったウロ王国が開戦した思惑も分からない。

 戦争もだが、武器の横流しのための調査も同時に動いている。まだバチスタ公爵が主犯である証拠が揃っていないのだ。また、南部騎士団の中で麻薬が流行った経緯も調査中だ。ちなみに、麻薬中毒の騎士もいて、麻薬を使っていた者たちは、城の一カ所に留めて、麻薬を抜く作業もさせていた。とにかくやることは多いのだ。

 窓の外を見る。早く戦争が終わり、いつもの生活が戻ることを願うばかりだ。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。