七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 188話 ノエル視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 188話 ノエル視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」188話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 188話 ノエル視点

 一般的な夏休みの終わり、ノエル・ル・スヴェニアは愛しいウェリーナが帰郷したという知らせを受け、バチスタ領にあるバチスタ公爵家の屋敷に足を踏み入れた。小さいころ、ノエル自身も住んでいた屋敷なので、顔を確認されただけで簡単に通された。この家の警備はゆるゆるである。ノエルがこの家の令嬢の部屋へ直行しようが、誰も気に留めない。彼女はこの家でそれだけ大事にされていないのだ。女遊びの激しい公爵とその息子二人が、どこの下級貴族の妻だか、高級娼婦だかを連れ込むため、公爵家だというのに得体のしれない人間が行き来している。

 ノエルが彼女の部屋へ移動する間にも、酔っぱらった女が廊下を徘徊していた。それを見てノエルは眉を寄せると舌打ちをした。

「下種が」

 ノエルが出来るだけ早く皇族になり、こんな場所から大事なウェリーナを連れ出さなくてはならない。
 ウェリーナの部屋の扉をたたく。

「ウェリーナ。俺だよ、ノエル」
「ノエル? いいわ、入って」

 美しいウェリーナは、ソファーに座ってお茶を飲みながらくつろいでいた。珍しく落ち着いているようだ。いつもこの家に戻るとイライラとしていたのに。
 まだ今日帝都から戻ってきたばかりのようで、侍女が片付けに励んでいる。
 ウェリーナの前に片膝をつくと、ウェリーナの手に口づけする。

「会いたかったよ、俺のウェリーナ」
「ほんと、ノエルって私が好きよね! 今日ここに到着したばかりなのよ? 到着して数時間で会いにくるなんて」
「そうだね、俺はウェリーナを愛している。だからウェリーナの姿が見られるなら、すぐに飛んで来るよ」

 ウェリーナはすました顔でカップに口を付ける。

「けれど思ったより早く領地へ戻ってきたんだね? 秋の宮廷舞踏会まではあちらにいるかと思っていたのに」
「だっていても仕方がないもの」
「いても仕方がない? 宮廷舞踏会なら皇太子に直接会えるからと、毎年気合入れていたでしょう?」
「あっえっと、そう! どうせノエルが皇帝になるのでしょう? だったら皇太子に会う必要もないかなって!」

 なんだ? あからさまに動揺して答えた。ウェリーナは嘘が上手ではない。何かあるのか?

「それは……皇太子は諦めたってこと?」
「そういうわけではないけれど……別に私皇太子が好きなわけではないもの。愛想ないし、冷たいし。今年はあの顔、もう見たくないと思っただけ」

 ふむ。これには嘘はなさそうだ。確かにウェリーナは元々皇太子の地位に興味があっただけだ。皇太子は綺麗な顔をしているくせに笑わないので、近づきたい女たちが遠巻きに見ていることもままあった。ウェリーナがあの顔に興味がないのはいいことだ。

 ノエルは使用人には聞こえないように小さな声で話す。

「それはちょうどいいね。実はもうすぐ皇太子は死ぬ予定なんだ。今年中にはね」
「……それって」
「うん、だから来年には俺も皇族の仲間入りをしているだろう」

 そろそろ計画も佳境である。数日後には仕掛けが動き出す。

「だから、できればウェリーナには帝都にいて欲しかったのだけれど。ここは危ないかもしれないから。宮廷舞踏会まではいると思っていたからね、そこは計算外だったな」
「ここが危ない?」
「少し過激なものを用意していてね」

 ただ、計画ではこの屋敷までは火の粉はかからない予定ではあるが、どこで計画が狂うか分からない危険もはらんでいる。

「うん、でも、大丈夫。もしここが危ない時は、俺が迎えに来るよ」
「……何をしようとしているの?」
「ウェリーナは心配する必要はない。俺が皇帝になれたなら、ウェリーナは俺と結婚してくれるのを忘れないでね」
「……分かってる」

 ウェリーナの綺麗な髪の毛にキスすると、ウェリーナの部屋を出た。本当はもう少し一緒にいたいけれど、計画を進めるのに忙しい。でもあと少し。あと少しで皇太子が死に、ウェリーナが手に入る。

 皇太子には何度も刺客を送った。雇い主が分からぬよう、刺客の国や地域をばらばらにして。なのに、今まで誰も暗殺に成功した者はいない。せめてどこか怪我でもしてくれたら。なのに、怪我一つ負っていないと聞く。本人が強いのか、よっぽど優秀過ぎる護衛を雇っているのか。

 しかし、それも今回で終わりだ。これから起きることの解決に向け、皇太子は絶対に出てくるだろう。そうなれば、それに乗じて暗殺しやすくなる。この計画で必ず皇太子を殺すのだ。

 ウェリーナを手に入れる。そのためなら、この国がどうなったってかまわない。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。