七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 184話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 184話

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」184話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 184話

「皇太子宮にオーロラも行っていいの?」

 アカリエル邸に戻ってすぐ、オーロラに皇太子宮へ遊びに行くことを提案したのである。

「ええ。オーロラは皇太子宮には行ったことがないでしょう。エメルたちが案内してくれるって言っていたわ。初めてのところに行くのは珍しくて楽しいと思うのだけれど、どうかしら?」
「行きたいわ!」

 興味津々のキラキラした目でオーロラは返事をする。オーロラもずっと家に籠りきりで退屈しているから、楽しんでくれると嬉しい。

「よかった! では一緒にいきましょう。オーロラはうちのお兄さまで会ったことがあるのはシオンだけかしら?」
「ううん、ディアルドさまとジュードさまにも会ったことがあるわ」
「じゃあ、エメルと会うのは初めてね?」
「そうなの」

 うーん、と考える。できればオーロラにも兄に会えない寂しさが少しだけでも埋められたらいいのにとは思う。シオンは昔天恵の訓練でアカリエル邸へよく訪問していた関係で、オーロラとは小さいころから仲が良いし、シオンもオーロラを可愛がっているので、シオンになら甘えられるだろうが、初めて会うエメルでは難しいかもしれない。ソロソもいるのだが、ソロソはあまり兄っぽい性格ではないので、私もソロソを兄とは感じたことがない。

「エメルはすごく優しくてね、いつもミリィを抱き上げてくれるの。オーロラも抱き上げてもらえたら嬉しいかしら? ノアやレオみたいには甘えられないかもしれないけれど、少し甘やかしてもらいたいと思わない?」
「そ、そんなこと言って怒られない? オーロラのこと図々しいって思うかもしれないわ」
「思わないわよ。シオンだっていつもオーロラを抱き上げるでしょう?」
「だってシオンは小さいころから一緒だもの」

 少しもじもじしながら悩んでいる。それもそうかもしれない。いきなり兄でもない人に抱き上げられるのは嫌かもしれない。相性もあるだろうし。

「オーロラに無理にとは言わないわ。当日エメルを見て決めてもいいのよ。考えておいて」
「分かったわ」

 それからエメルにすぐに手紙を書き、オーロラと訪問する日程を決めた。
 そして皇太子宮を訪問する日、アカリエル公爵家の馬車で皇太子宮へ向かう。オーロラは皇宮自体が初めてらしく、窓から興味津々で景色を見ていた。

 皇太子宮に到着すると、オーロラの手を握り執務室へ移動する。オーロラは緊張の面持ちで扉の前で待っていた。扉が開かれると、二人で入室する。

「ミリィ、オーロラ嬢、いらっしゃい」

 カイルが机の前から移動し、こちらに向かってくる。

「オーロラ、皇太子殿下です。こちらはミリィの兄のエメル、それと……あら? ソロソは?」
「ソロソは用事で少し出ているんだ」
「そうだったのね」

 オーロラはカイルにお辞儀をする。

「初めてお目にかかります。オーロラ・ル・アカリエルと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「ミリィの仲の良いオーロラ嬢なら大歓迎だよ」

 カイルに珍しく、初対面の相手なのにほんのりと笑みを浮かべている。オーロラはほっとした表情で今度はエメルを見た。

「エメルさま、いつもミリィお姉さまにはお世話になっているのに、今日はエメルさままでお話をしてくださると聞きました。ありがとうございます」

 いや、オーロラよ、今お世話になっているのは私の方なのだが。

「こちらこそ、いつもミリィと遊んでくださり、ありがとうございます」

 エメルはオーロラの手の甲にキスをする。オーロラの頬が少し高揚していた。よかった、オーロラはエメルが苦手ではなさそうだ。これならすぐに仲良くなれそうである。

「きゃっ」

 カイルが急に私を抱き上げた。

「カイルお兄さま?」
「せっかく来たのだから、俺の相手もしてくれないとね?」

 いやいや、今はまだオーロラの緊張を解く手伝いが先だろう。ちらっとオーロラを見ると、少し羨ましそうな目をしている。あれ、やっぱり、抱き上げて欲しいんじゃないかな?

「……エメル? もしよかったらオーロラを」

 あれ、そういえば、結局抱き上げてもらうのか、オーロラに聞いていない。オーロラに聞くのが先か? と考えていると、エメルがこちらの意図を先にくんでくれた。

「オーロラ嬢、もしよろしければですが、今のミリィのように私が抱き上げてもよろしいですか?」

 オーロラは可愛い目をぱちぱちと瞬きし、笑みを浮かべて言った。

「はい!」

 エメルはオーロラを優しく抱き上げた。オーロラは兄で抱き上げられ慣れているし、エメルは私を抱き慣れている。だからか危なげなく抱き上げられたオーロラは、リラックスした様子でエメルに話しかけた。

「久しぶりに抱っこしてもらえました。ありがとうございます」
「こんなことでしたらいつでもおっしゃってください。オーロラ嬢であれば、喜んでいたしますよ」

 うーん、エメルとオーロラは美男美女で絵になるわぁ。キラキラしていて目の保養である。

 それから、四人でお茶会をする。四人で話すというより、ほとんど私とオーロラが話をしているのをカイルとエメルが聞いているだけなのだが、オーロラとエメルはかなり打ち解けたような気がする。

「そうだ、エメル、オーロラ嬢に皇太子宮の案内をしてあげたらどうだ? 一階から三階までなら見て回ってもいいぞ」
「それはいいですね。オーロラ嬢、いかがですか?」
「はい、ぜひ!」

 オーロラが嬉しそうに笑うので、エメルも嬉しそうに笑う。二人は席を立つと、手を繋いで部屋を出て行った。私とカイルはソファーに場所を移す。

「オーロラ可愛いでしょう!」
「そうだね、ミリィが可愛がるのも分かる」

 カイルは笑みを浮かべる。

「今日はオーロラも招待してくれて、ありがとう」
「いいんだ。俺はミリィに会いたかっただけだから」
「ミリィもカイルお兄さまに会えて嬉しい」

 カイルに抱き着く。カイルの匂いがする。落ち着くなぁと思いながら、カイルから体を離した。
 じーとカイルを見る。

「ミリィ?」

 うーん、今日のカイルを見る限り、いつものカイルだな、と思う。私の兄としてのカイル。本当に女性として私を愛しているのだろうか。いつも通り過ぎて、よく分からない。カイルの求婚のことをちゃんと考えたいと思っている。だからまずはカイルの言う、私に対する女性としての愛を私自身が確認したいと思うのだ。

「カイルお兄さまは、ミリィと結婚したいのよね?」
「そうだね」
「ミリィを妹としても、女性としても愛しているのよね?」
「そうだよ」
「……カイルお兄さまが、ミリィを女性として愛しているのってどこなのかしら?」
「いっぱいあるけれど、俺に向ける笑顔や視線、甘えてくれるところとか、抱きしめてくれるところとか、愛情を向けてくれるところ、可愛いところとか……」

 カイルはつらつらと続けるが、だんだんと私は首を傾げる。

「えっと、じゃあ、ミリィを妹として愛しているのってどこ?」
「そうだなぁ、笑顔、甘えてくれるところ、抱きしめてくれるところ、愛してくれるところ、何をしても可愛いところ……」

 女性としての愛と妹としての愛、そんなに違いがなくないか? やはりそれらは全て妹への愛なのではという謎がさらに深まる。質問の仕方が駄目だったのだろうか。

 カイルの私に対する気持ちを私が確認するには、どうすればいいのだろうか。いつも通り楽しく話をして、いつも通りカイルからは妹としての愛を受けていると思うのだが、どのあたりに女性としての愛を向けているのかが分からない。

 カイルがいる時はいつもエメルもいるので、一緒に過ごしている時間の中でエメルが「はい、今のが女性としての愛ですよ!」と指摘してくれるといいのだけれど。今度エメルに頼んでみようか。カイルが嫌がるだろうか?

 うーん、難しい。気持ちを確認する良い案がなかなか浮かばない。

「ところでミリィ」
「なあに?」
「エメルたちが帰ってくる前に、口にキスしていいかな」

 いつも突然だ。恥ずかしいなぁと思いながら返事をする。

「……うん、いいわ」

 カイルは嬉しそうに笑い、私の背中に手を固定すると口にキスをする。勝手に涙が出てくるが嫌なわけではない。カイルを目の前にしていると、なぜかドキドキして、これ以上頭が働かなくなるのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。