七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 182話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 182話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」182話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 182話

 帝都にあるアカリエル邸へやってきて早五日。朝起きて日課の柔軟をしながら、目の前で運動をしている公爵令嬢のオーロラと公爵夫人を見る。
 何度見てもすごい光景である。この部屋は宴などのパーティーができる、いくつかあるうちの部屋の一つを潰して改装したものだという。三階分ほどの天井の高さがあり、床には色んな運動の道具が揃っている。全て特注らしいのだが。

(これなんか、前世で見たヤツに似ているわ)

 重りを増やして腕やら足やらを鍛えるやつである。それに走る機械もある。全て公爵夫人の意見を参考に作ったらしいのだが、どうみてもこれは。もしや公爵夫人は私のような転生者だろうか。ということは神?

(いやいや、そんなわけない)

 神であれば、私のことを神だと気づきそうであるし、今までそんな素振りをされたこともない。うん、もう深く考えるのは止めよう。そんなことよりも、二階部分の空中に橋渡しされている十センチほどの棒を、命綱を付けているとはいえ、走って行ったり来たりしている夫人に突っ込みたい。先日、あれは何に使うのか聞いたら、いつか襲われた時に逃げる時、綱渡りのところを逃げなければならないことがあるかもしれないでしょ! と言われた。そんなことあるか? オーロラはオーロラでバク転やら側転やらぴょんぴょん飛び跳ねている。アクロバット技連発に驚愕しっぱなしで、オーロラは天恵を持っているとはいえ、すごすぎやしないか? うちの影やシオンも人間業ではないものが使えるが、オーロラは公爵令嬢だったよね? と首を傾げてしまう。

 ちなみに、オーロラは複数の天恵を持っていて訓練もしているそうだ。オーロラの兄のノアとレオ、そしてオーロラの三兄妹は、天恵で物を触らずに動かしたり、自分自身が浮いたりの能力は三人とも持っているという。それ以外にもまだ持っているというから、さすが天恵一族だ。他にどんな能力を持っているのかわざわざ聞くことはないので、全ての持っている能力は私は知らないけれど。そういえば、昔幼いオーロラに天井まで吹き飛ばされたな、と懐かしい記憶を思い起こす。

 私は柔軟が終わると、腹筋を鍛えたり、体幹を鍛えたりする。あまりやりすぎるな、と兄に言われているし、私も無茶はしないよう気を付けている。最後にこの部屋を五周歩くと、使用人から水をもらった。

「ミリィお姉さま! そろそろ朝食にしましょう」
「そうしましょう」

 この家にいる間、私とオーロラはいつも一緒だ。オーロラがいつも一緒にいてくれるので楽しい。オーロラは今年十四才になるが、小さいころからよく遊んでいたため、私の妹のような存在だった。夫人はまだまだ運動が足りないらしく、夫人をおいて私たちは朝食に向かった。

 朝食後は私は読書をしつつ、オーロラの勉強を見る。オーロラは頭もよく、のみこみが早い。家庭教師も付けているが、週に三回と決まっているらしい。そして昼食後、オセロをしたり散歩をしたりして、お茶の時間となる。

「うん、このお菓子も美味しいわ! アカリエル公爵家の料理人もいい仕事するわねぇ」
「ありがとう、お姉さま! お菓子職人を一人専門で雇っているの。パパがママとオーロラのためにって!」
「オーロラのパパは良いお父様ね」
「そうなの! オーロラ、パパ大好き!」

 そのパパもオーロラを溺愛している。相思相愛である。

「はぁ、パパにずっと会えていないなぁ。それにお兄さまたちにも」

 アカリエル公爵とノアとレオは、今領地に戻っている。

「ミリィも会えていない。パパとママとお兄さまたちに会いたいわ」

 アカリエル公爵家へ来て、まだ五日。けれどこんなに長い間兄たちに会えないのは、小さい頃にザクラシア王国へ誘拐されて以来である。私には兄が多いので、少なくとも誰か一人とは必ず毎日会っていたのに。兄に抱きしめてもらいたい。兄に会えなくて寂しい。

 二人で溜息をつく。私よりも、オーロラはもっと兄たちとは会えていない。だから愚痴っぽくならないようにしなければ。そう思いながら、ふとオーロラを見ると瞳一杯に涙を溜めていた。

「オーロラ、パパに会いたい! お兄さまに会いたい!」
「オーロラ……」

 ずっと我慢していたのは知っている。優しくて甘やかしてくれる父と兄が恋しいのだ。そして私も。
 オーロラを見ていると、私も涙が盛り上がってくる。ああ、自分よりも幼いオーロラの前で泣くなんてあってはならない。けれど意思とは反してぽたぽたと涙が流れていく。あんなに泣かない子だったはずなのに、最近兄に会えない寂しさで涙もろくなっている。

「ミリィも、お兄さまに会いたい」

 公女二人の泣きっ面に、使用人たちもさぞ慌てたことだろう。気づいた時には公爵夫人が横で私とオーロラを抱きしめていた。

 それから夕方になり、定期的にやってくるダルディエ邸の使いが面会を求めてきた。いつもはここの使用人に言伝で終わるのに、なんだろう、と思う。ダルディエ邸から一緒に来ているカナンとアナンと顔を見合わせた。

「こちらのお手紙がお嬢様に送られてまいりました」

 手紙もいつも間接的にもらうのに、なぜわざわざ、と思って送り主を見て納得した。皇妃であるティアママからだったのである。内容は会って渡したいものがある、ということで日付まで指定されていた。

「明日だわ。やけに緊急ね? 何だろう」

 とにかく、皇妃からの呼び出しは断るわけにはいかない。次の日、アカリエル公爵家の馬車を出してもらい、カナンとアナン、そして追加の護衛を付けてもらって皇妃宮へ向かった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。