七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 178話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 178話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」178話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 178話

 ある日の夕方、テイラー学園から帰宅すると、執事からもうすぐ兄会議をするので来てくれ、という兄の伝言を受け取った。部屋で着替えて兄の集まる部屋へ移動する。そこではエメルとカイル以外の兄たちが集まっていた。兄会議に私まで呼ばれるのは少ない。珍しいことである。いつも兄会議で決定したことを伝えられるだけなのだが。

「今日はみんないるのね。夜会があるのではないの?」

 ディアルドの横に座りながら、兄たちを見る。やはり何人かは夜会に参加する恰好をしていた。

「あるよ。ただ話し合いの場が必要でね、もうすぐエメルたちも来る」

 そう話をしていると、夜会の恰好をしたエメルとカイルがやってきた。あんな恰好をしてはいるが、カイルは一応お忍びだとは思う。いつもうちに来るときは皇太子とバレない馬車に乗るのだ。今日もみな忙しいようなのに、何の話し合いかと思う。空いているソファーにエメルとカイルが座る。

「ミリィ、こっちにおいで」

 カイルが笑っていうので席を立とうとすると、ディアルドの手が私の腰を離さなくて立てない。あれ?

「このままでいいでしょう」
「今日は俺は帰るのですよ。少しくらいミリィを傍に置いてもいいでしょう」

 どうした。表面上はにこやかなのに、ピリピリとしていないか。私はディアルドの横でもカイルの横でもどっちでもいいが。うちでは妹の取り合いは普通である。昔はディアルドとジュードがよく私を取り合っていた。まあ、妹って私にとってのナナのようなものなのだろう。大切にして可愛がる存在。

「ディアルド、話し合いの間だけですよ」

 カイルの言葉にディアルドは眉を顰めはしたが、私の腰を離した。

「……仕方ありませんね」

 カイルの方へ行っていいのかな? そろっと立ってカイルの側に行くと、カイルは足と足の間を指した。そこに座れと。カイルの太ももに挟まれるように座ると、カイルは私のお腹へ手を回した。夜会着なのでそんなにくっついていると暑くないのだろうか。少し体をよじって後ろを向くと、笑みを返された。機嫌よさそうだし、いいか。と前を向く。

 アルトが口を開いた。

「今回ミリィとカイルさまにも来てもらったのは、できるだけここに集まっている者のみで話を完結させたいからだ。知る人は少ないほうが良い話題なので」

 アルトが話し出したのは、私を睨んでいたウェリーナ・ル・バチスタの件だった。内容は割愛されたけれど、今後ウェリーナ自身が私を恨んだり危害を加えたりすることはないとのことだった。ただ、その繋がりで私を狙っているかもしれない人物がいるという。

「スヴェニア男爵。カイルさまはご存じですよね?」

 スヴェニア男爵は私も知っている。私の夜会でのお菓子友達みたいな人だ。

「……彼がどうした」
「やはり知っているのですね? 彼が先帝の息子だと」

 え? スヴェニア男爵が先帝の息子? ということは、現皇帝であるルイパパの弟ということか? バルトとエメルは先に聞いていたのか驚いていないが、他の兄たちは驚愕していた。
 何も言わないカイルに、アルトがさらに続けた。

「本来であれば、裏を取ってからカイルさまには聞こうと思っていましたが。今回はその時間が惜しいので、こういう形を取りました。できれば隠さず話していただきたい。ミリィの命がかかっている」
「……え? ミリィを狙っているのって、スヴェニア男爵なの?」
「そうだよ」
「うそ、ミリィ、スヴェニア男爵と夜会で楽しくお話したよ? ミリィを狙っている感じしなかったけれど」
「……やっぱり、もうミリィに接触した後だったか」

 アルトが眉を寄せて言った。

「う、うん。あ、ジュードも見ているわ。前に一緒に行った夜会で、ミリィと最後に話をしていた方がスヴェニア男爵なのだけれど」
「……ああ、あの男か! どこかで聞いた名だと思ったんだ。……そうか、あの時はミリィの可愛さに近づく、面倒な男がまた増えたと思っただけだったのだが。あの時からミリィを狙っていたのか?」

 あの時は、デザートや甘味の話で盛り上がったのだけれど、優しそうでまったく怖くはなかった。けれど、こちらを騙そうとする者は、笑顔で近づくとよく言うではないか。今頃怖くなってくる。そんな私を抱く手に力を入れたカイルは口を開いた。

「確かにスヴェニア男爵は先帝の子だ。だがそれは表ざたにはしないことになっている。知っているのは本人と南公家族。あとは数名いるが、口は固い。……本当にミリィを狙っているのだな?」
「ミリィに接触している以上、こちらはそのつもりで動きます。あと、カイルさま、あなたも狙われているようですよ。ウェリーナ嬢を手に入れるために、スヴェニア男爵は皇帝となるべく動いているという話を聞いています」

 カイルもスヴェニア男爵に狙われている?

「現在彼に皇位継承権はないでしょうが、カイルさまがいなくなれば、どうなるかわかりませんよね。皇位継承は男子のみですから、皇帝陛下の姉上さまたちの子がカイルさまの次に皇位継承権がありますが、皇帝陛下に弟がいるなら、彼の方が本来であれば姉上さまたちの子より皇位継承権は高くなる。本人がそれを目論んでいる可能性、また周りがそれをそそのかす可能性。色々ありますが、彼らにとってカイルさまの排除は必須事項でしょう」

 またカイルの命は狙われるのか。先日も暗殺未遂があったと聞く。私に言わないだけで、他にも狙われたことはあるだろう。立場的に仕方がないことなのかもしれないが、カイルが傷つくと思うだけで寒気がする。ぎゅっとスカートを握りしめる。

「もちろん、これは確定事項ではありません。ただ、そういう話があると頭に入れておいてください。対処も準備も必要でしょう。準備しても何もなければ、それで済む話です。こちらも調べていますが、スヴェニア男爵がいつから動いているのか分からない以上、時間がない。カイルさまも調査なさるでしょう? これに関してはこちらにも情報を共有していただきたい」
「分かった」

 それから兄たちが話をつめ、その場がお開きとなった。
 みなが席を立とうとするとき、私は口を開いた。

「あの」
「どうした、ミリィ」
「カイルお兄さまに、ナナの……」

 ナナの涙を持っていて欲しい。ちゃんと口にしないのは、これはカイルは知らない話だからだ。兄たちに誰にも言わないと約束している。けれど。

「いいよ、ミリィが渡したいなら」

 ディアルドが私の頭を撫でた。よかった、言葉にしなくても通じたようだ。カイルは不思議そうにしているが、他の兄たち全員笑っているので、納得してくれているのだろう。

「ありがとう! カイルお兄さま、渡したいものがあるから、ミリィの部屋に来てくれる? まだ時間は大丈夫かしら」
「時間は大丈夫だから、いいよ」
「ミリィ、渡すのはいいけれど、カイルさまと二人っきりは駄目だよ」
「うん? 部屋にはカナンもいるわよ?」

 それからカイルの手を引き、部屋へ移動するのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。