七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 175話 アルト視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 175話 アルト視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」175話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 175話 アルト視点

 先日モニカがダルディエ邸に泊まりに来ていた次の日、ウェリーナ嬢のことが知りたくて、モニカに話を聞くことにした。俺とミリィとモニカ、そして昨日泊まっていないはずのエグゼが同じ部屋にいる。朝からモニカを迎えにやってきたエグゼは椅子には座っているものの、ナナと遊んでいる。モニカに付いてきているくせに、最近目的が変わっていないだろうか。エグゼがダルディエ邸にいるときは、ナナと遊んでいるところしか見ていない。

 ナナと遊んでいるエグゼの頭の上に花が飛んでいる幻想が見えるな、と呆れた気持ちでエグゼを見ていたが、意識を前に戻す。

「二人はウェリーナ嬢を知っているね。ミリィは五年生の時、学園で一緒の敷地内にいたでしょう。モニカ皇女も休学する前の四年生の時に一緒だったはずです」
「さあ、わたくしは知らないわ?」
「……知らない?」
「モニカは五年生の最後に帰ってきたでしょう。だからウェリーナ嬢が卒業するまでの間、私たちが五年生のときも少しだけ一緒の学園にいたのよ? 覚えてない? ミリィを睨んでいたウェリーナ嬢を見て、いい度胸ね、私のミリィを睨むなんて百億年早いわーって突進しようとしたでしょう」

 そんなことをしようとしたのか。想像つくので笑いそうだが我慢する。

「……ああ、そんな女がいたわね。あれがウェリーナ嬢なの?」
「そうよ。すごく綺麗な人よね。だから睨んでいても迫力があって怖かったわ」
「……始末しましょう」
「駄目よ!?」

 モニカの相変わらずなところに苦笑し、俺が口を開いた。

「そのウェリーナ嬢がミリィを恨んでいる理由が知りたくてね。調査中ではあるのだけれど、気になる点がある。ウェリーナ嬢がミリィを恨みだしたのは、ミリィが五年生となって学園に出席するようになってから。それまではミリィの名は知っていても見たことがなかったから、恨んだことはない。またウェリーナ嬢の父である南公はミリィに目をかけているとウェリーナ嬢は言うけれど、どれだけ調べてもそんな事実はない。ただそれを踏まえ、シオンが言うんだ。モニカ皇女の時のようだと」
「わたくし?」
「ミリィがモニカ皇女と初めて会った時、一目でそれがウィタノスだと分かったね。それは逆も同じなのかな。モニカ皇女がミリィを見た時、一目でカルフィノスだと分かったのだろうか」
「そうね、見てすぐに分かったわ。わたくしのカルフィノスだって」
「そうだよね。それがウェリーナ嬢にも言えるんじゃないかってシオンは言うんだ。ミリィを初めて見た時に、ミリィをカルフィノスだと気づいた」
「……あの女が神だと言いたいの? それはないと思うわ。わたくしは目に映っていないなら神かどうか気付けないけれど、目で見ているのなら神かどうか分かるわ。睨んでいたあの女を見たけれど、神だとは思わなかったわ」

 やはり違うか。シオンはああ見えて勘が鋭い。いつものように根拠がなくとも野性的な勘が働いたのかと思っていたが。

「……そういえば」

 モニカが何か考えこみだした。

「何か気づいたことでも?」
「ミリィのことではないのだけれども。カルフィノスね、あの人、親兄弟子供に好かれるの。なのに、その中で一人だけ、いつもカルフィノスを睨んでいた子がいたのを思い出したわ。カルフィノスは気づいていないけれど、鈍いから」
「そ、そんな急に悪口突っ込まなくても!」
「鈍いのが悪いなんて言っていないじゃない。そんなカルフィノスも可愛いもの」
「あ、ありがとう?」

 あれ、褒められたのかな? 貶されたのかな? と首を傾げるミリィが可愛い。モニカとミリィに会話をさせることで、俺も考えをまとめる。

「あの睨んでいた子、誰の子だったかしらね? 思い出せないわ、子供が多すぎるのよね。エダルドかしら、ヴィダニノスだったかしら」
「えっと、その睨んでいた子は、神の子なの?」
「そうよ。兄弟の誰かの子。ああでも、その子は半神ね。相手は人間の女性だったもの。もう、半神の子もうじゃうじゃいるのよ! 兄弟の相手するだけでも面倒なのに、子供まで覚えていられると思う?」
「か、神って奔放なのね?」
「無秩序なのよ。自由だしわがままだし」

 自由でわがままなのは、モニカも一緒では? 口にはしないが。

「ただねぇ、その子を見たのって、かなり前よ。半神は寿命があるから、もう死んでいるはずなのだけれど。ただ……ミリィは前世でわたくしが言ったこと覚えていて? 前世で何戦目だったのか」
「八九戦八二勝六敗一引分、だったよね」
「そうよ。前世の時点で八九回転生していて、わたくしがカルフィノスを八二回殺し、六回殺された。残りの一引分は何だと思う?」
「……相打ちかしら」
「いいえ。わたくしがカルフィノスを殺す準備をしている最中にカルフィノスが何者かに殺されたの。あの時は悔しかったわ。あと少しでカルフィノスを殺せたのに! 人間なんかに殺されたのかと、身体が沸騰しそうだったわ」
「誰かに……殺された」
「犯人は知らないやつだった。そいつを殺して、次の転生のためにわたくしもすぐに死のうと思っていたのだけれど、犯人は自殺した後だった。だからその犯人は死体しか見ていないのだけれど、今思えば違和感があったかもしれない」
「どんな?」
「自分が死んだときは感じないのだけれどね、カルフィノスを殺して死にゆくさまを見ていると、こう、なんていうのかしら、カルフィノスから普通には見えないけれど糸のようなものが出だすの。神の気配を纏って次の転生先へ糸を伸ばすような感じといって通じるかしら」
「なんとなくは分かるわ」
「さっき言った犯人の周りにも、その糸の残り香のようなものが残っていたの。あれは犯人がカルフィノスを殺したから、カルフィノスの気配が犯人に付いてきちゃったのかと、あの時は深くは考えなかったのだけれど。あの薄すぎる神の気配は、カルフィノスではなく、もしかしたら半神によるものかもしれないわね」
「一緒に輪廻してきてるってこと? でも半神なら寿命があるのでしょう?」
「もし今だったら、という話よ。今回九十回目の輪廻よ? あの神の世界にいたなら、その半神はとうに寿命よ。ただ、わたくしみたいにカルフィノスの遊戯に乗っかっているなら、九十回分の輪廻の期間は眠っているのと一緒だもの。まだ死んでいないかもしれないわ」
「どういう意味?」
「そうねぇ、例えるなら。神は寿命がないけれど、半神は寿命がある。半神の寿命はだいたい百年くらい。半神が残り寿命を一年残して、九十九才の時に遊戯に出るとするわね。遊戯に出ている時は、半神の本当の体は年を取らないので九十九才のまま。そして千年遊戯に出ていたとしましょうか。千年後に遊戯を終えて帰ってきた時の半神の年はまだ九十九才のままよ。遊戯に出ていなければ本来なら死んでいるはずでもね」
「なるほど……」
「ちなみに、遊戯ができるのは神だけよ。半神には無理。だから、もしその半神が遊戯をしているとしたら、完全にカルフィノスの遊戯に乗っかっているということよ。忌々しいわね!」
「……それをいうなら、ウィタノスもカルフィノスの遊戯に乗っかっているのでしょう?」
「当たり前でしょ! じゃないと、一緒に輪廻できないじゃない!」
「あ、はい」

 ミリィはモニカの勢いにたじたじになっている。
 俺は頭を整理しながらモニカに口を開く。

「つまり、ウェリーナ嬢がその半神だと?」
「可能性の話よ。言っておきますけれど、目の前で見たとしてもわたくしには半神かどうかは確認できないわ。神の影響が少なすぎて、ほとんど人間と同じようにしか見えないの」
「いや、そういう情報があるのとないのでは随分違いますからね。助かりますよ」
「じゃあ、あとはあなたに任せていいのね? ミリィに危害が加えられないよう、対処しなさいよ!」
「もちろん」
「それと! もしそのウェリーナ嬢とやらが半神だったなら、わたくしに渡してくれる? わたくしのカルフィノスを一度殺し、今回もミリィを狙っているということでしょ! 八つ裂きにしてやるわ!」
「うーん、そのあたりの対処も任せていただきたいのですが」

 苦笑しながら告げる。

「そうよ、モニカ。まずは話を聞かないと。もしかしたらカルフィノスが原因かもしれないでしょう? 喧嘩したとか」
「あのカルフィノスが喧嘩なんてするわけないでしょ! 怒ったところも見たことがないわよ」
「分かった分かった。とにかく、アルトに任せたいわ。モニカは処分とかに気を取られるよりも、ミリィと一緒にいる時間に集中してほしいな」
「し、仕方ないわね! よくてよ!」
「実はモニカとお揃いの服を作ろうと思っているの! ジュードにお願いしていてね、楽しそうでしょ。後でアンが話を聞きに来るから、一緒に行きましょう」
「そうね!」

 モニカとミリィは楽しそうに部屋を後にした。

 モニカが知っている情報は聞けた。もしモニカの言うようにウェリーナ嬢が半神だというのなら、その恨みはカルフィノスに帰するもの。父がミリィを目にかけていると言っていたが、ここで南公は関係ない。となると、半神の父である神がカルフィノスを目にかけている、とうことか。

 なるほど、仮定の話にはなるが、この情報で一度ウェリーナ嬢に接触を試みるか。さあ、どうやろうか。頭の中で計画を立てるのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。