七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 170話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 170話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」170話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 170話

 少しの間休んでいたテイラー学園だが、また通学を始めた。今年は卒業であるし、卒業試験だってあるし、残り少ない学生を楽しみたい、ということもある。学園へ行くと、やはり求婚の噂の真相を探るべく、いろんな人に話しかけられたが、「全て父に任せており、わたくしには分かりかねますわ」と言うに留めている。余計なことを言ってしまうと、またそこから噂になるし、令嬢は基本、当主である父の采配で動くものだ。だから私の言い訳に納得しようがしまいが、表向きは納得するしかないのだ。

 ザクラシア王の一団はまだグラルスティール帝国に留まっている。彼らが帰るまでは、私はしばらく夜会などには出ないことと兄たちに言い含められていたため、空いた時間は卒業試験の勉強に費やしており、それなりに忙しい。

 またシオンの命令により、私の通学中の護衛が増えていた。皇太子との婚約の噂を本気にとらえる人がいて、私に危害を加えられないように念のため、とのことだった。確かに婚約については否定も肯定もしていないので、学園内だけでなく社交界でも噂の的だという。ただシオンの様子を見るに、護衛を増やすのはカイルとの婚約の噂だけが理由ではない気がするのだが、シオンは多くは語ってくれなかった。

「今日は二人共揃っているのね! 珍しいわ」

 今日の添い寝担当はアルトだったのだが、バルトも部屋にいたのである。

「俺は彼女に急きょ会えないって言われてね。寮に帰るつもりだったんだけれど、ミリィの顔が見たくなって帰ってきちゃった」
「嬉しい! ありがとう、バルト」

 全員風呂も入り、アルトとバルトはソファーに隣同士に座っている。私はアルトの膝に横に座り、バルトの膝上に足を投げ出していた。バルトは私の足の裏を触っているので、くすぐったい。

「最近カイルさまとは会っている?」
「ううん、あれから会えてないの」

 あの求婚騒ぎの日から、カイルはダルディエ邸にもやってくる時間はないようだった。

「ねえ、アルトたちはカイルお兄さまの気持ちを知っていたのでしょう? どこをどう見て、そう思ったの?」
「どこをねぇ」
「お兄さまたちより、ミリィの方がカイルお兄さまと一緒にいたのに、何も感じなかったわ」
「うん、ミリィはちょっと鈍……、母上の言うように好きな人がいたから気づかなかったのだと思うよ」

 今、鈍いと言いそうにならなかったか? 少しムッとして頬を膨らませる。

「ふっ、ミリィ、それじゃあただ可愛いだけだよ。ほら機嫌直して」

 頬を撫でられて、普通の顔に戻した。

「じゃあ、カイルお兄さまのどこをどう見て気持ちを知ったのか教えて!」
「わかったわかった。そうだね、以前ミリィが悪役令嬢風? やユフィーナの贈り物の試作品を俺たちに発表会したの、覚えている?」

 覚えている。ディアルドが結婚する前に作ったドレスで、社交界の表舞台では着られないため、兄たちに見てもらって楽しんだ発表会である。一年以上前の話だ。

「覚えているわ」
「あのミリィはすごく可愛いかったけれど、あの時、カイルさまだけミリィに見惚れすぎて顔が赤くなっていたよ」
「……そうだったかしら。ミリィに見惚れたのではなくて、疲れていたからじゃなかった?」
「ミリィがそう勘違いしているだけだよ」

 むっとする。また私だけ鈍いようではないか。

「それにあの時は見惚れただけではなくて、ミリィの色気に当てられたんだと思う」
「ミリィの色気? そんなものあるかしら?」

 色気というのは、モニカのような妖艶な人を言うのだと思う。結局私は兄たちには甘えてしまい、子供っぽさが抜けない。そのどこに色気があるというのか。

「あるよ。ミリィが妹じゃなかったら、俺はすぐに落ちるなぁ」

 それこそアルトが色気を含んだ表情をすると、私の頬にキスをする。なんだか嬉しくなって、アルトの頬にキスを返した。アルトは嬉しそうに笑う。

「ミリィは妹だから、こういう返しができるんだよ」
「ん?」
「たいていの女性は、俺がキスした時点で顔を赤くするか恥ずかしがるか、もしくはこちらをもっと誘ってくるか。普通はそれ以上のことを求めてくる。けれどミリィみたいに見返りを求めずにただキスを返すだけなんて、妹だからできることだよ」
「ミリィが妹だから、アルトの色気に惑わされないってこと? 発表会の時、色気があったとアルトは言うけれど、お兄さまたちは誰もミリィに悩殺されなかったわよね?」

 ディアルドやジュードなんかは小言を言っていたような覚えがある。

「俺らはね、兄だから、どんなミリィも可愛いと思うだけだよ。だから言ったでしょう。カイルさまだけ反応が違ったって」

 納得いくような、いかないような。
 そろそろ交代してと、バルトがアルトに言うので、今度はバルトの膝に乗り、足をアルトの方へ投げ出した。

 カイルは私を妹としても、女性としても愛していると言っていた。

「よく分からないわ。妹への愛と女性への愛の違いは何なのかしら?」

 逆を言えば、兄への愛と男性への愛の違い。ふむ、とバルトを見る。うん、相変わらずのイケメンである。バルトが本気になれば、落ちない女はいないのではと思う。だからといって、私がオキシパル伯爵を好きになったような感情が沸き上がるかと言えば、まったく沸き上がらない。

「ねぇ、バルト。ミリィにキスしてみて?」
「いいよ」

 頬にキスしてくれたバルトに、嬉しい気持ちはあるが、恋愛感情は沸き上がらない。兄は兄である。これがやはり普通だと思うのだ。やはりカイルは妹への愛を女性への愛だと勘違いしているのではないだろうか。

 それとも、私が兄たちに毎日のように頬やおでこにキスされまくっているので、慣れてしまったことがいけないのか。ほとんど日課と化している。
 ふむ、と考える。兄への愛と男性への愛の違いについて、何か別の見分け方があるといいのだが。

「バルト、ミリィにまたキスしてみて? 口に」
「口に?」
「うん」

 普段口にはキスされない。これなら何かわかるだろうか。

「……うーん、できるかできないかで言えばできるし、ミリィの一番をもらえるのは嬉しいけれど。口は止めておこうか」
「……どうして? ミリィが嫌いに」
「違う違う、ミリィのことは愛しているからね、そこは一生変わらない部分だから。ただ口はねぇ、妹に対する行為から外れると思うから」
「そういうもの?」
「そういうものだよ」

 頬と口にそんな差があるのか。ほんの数センチ横にずれるだけなのに。
 これが兄ではなく他人なら恥ずかしく思うだろうが、兄からのキスは頬も口も一緒な気がする。

「アルトも口にはできない?」
「そうだね、ほかのところなら、たくさんしてあげる」
「他のお兄さまもみんなそうかしら?」
「お、いいね、試してみたら?」
「どういう反応するか楽しみだ。ミリィ、今度試した後どんな反応だったか教えてよ」
「うん、分かった」

 兄たちは口にキスをしてくれるのか。そこに兄と男性の違いがあるかのように、双子は言う。現世ではまともに恋愛できていないので、恋愛偏差値が低すぎる。カイルの気持ちにどう答えを出すのか。しかしそもそも答えを出す前に、自分が恋愛をよく理解していないことに気づく。

 明日から色々試してみよう、と心に誓うのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。