七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 162話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 162話

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」162話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 162話

 夏休みが明け、最終学年に上がってから一ヶ月が経過した。時折秋らしい風がふくものの、まだ暑い日も多い。

「ミリィ、おはよう」
「……レオ、おはよう。今日は早いのね」

 テイラー学園へ通学し、馬車から降りてアナンとカナンを連れて歩き出そうとしたところ、同じように馬車からレオが降りてきた。
 テイラー学園の学生は、寮がほとんどである。ただ貴族であり一族を背負う令息令嬢の中には、学生と平行して家の仕事をしているものもいて、だから通学しているものもいるのだ。割合的には八割が寮、二割が通学である。私は一人で寝られないので通学なのだが、表向きは病弱だから何かあった時に実家の方が対応しやすいと学校に告げている。兄たちはエメル以外は寮暮らしだった。時々は家に帰ってきていたが、そのあたりは学園からも口出しはしないので自由なのだ。レオも通学であるが、レオの場合、溺愛するオーロラから離れたくないからである。またトウエイワイド帝国のモニカとエグゼも通学で、帝都に買った邸宅から通学している。

 私たちは歩きながら会話をする。

「昨日はノアがオーロラの添い寝なんだよー。俺の担当だったのに奪われた。それで一人寝の俺は早く目が覚めて」
「なるほど」

 私のようにオーロラも夜は兄たちが添い寝しているという。ノアとレオが揃っている時は、いつも奪い合いというから、そのシスコン具合にいい調子だと頷いてしまう。

「ノアがこの時期に帝都にいるの珍しいわね」
「聞いていない? ノアはダルディエ領に行っていたんだ。恐竜を引取りに」
「ああ、それね。聞いているわ。今の時期だったのね」

 パパから聞いた、恐竜の取引である。ノアが引取りに行っていたとは。

「すごいらしいね恐竜。気になるから、今度一度領に帰って見て来るわ」

 レオはペロリと唇を舐める。ワクワクしているところがシオンのようである。

「恐竜は今帝都にいるのじゃないの? ノアが連れてきたのでしょう?」
「帝都近くまではね。ノアは帝都に一度寄っているけれど、恐竜は先に川を下ってアカリエル領へ向かってる」

 なるほど。西へ行くなら川が早い。ダルディエ領から帝都へ行き来する時は川を使うことが多いが、その川が帝都の近くから西へ伸びているのである。

「それにしても、西に帰るとなるとオーロラと会えないのがな。危ないから連れて帰れないしね」
「……やっぱり戦争になりそうなの?」
「ちょっと動きがね、怪しいんだわ。ちょいちょい仕掛けてくるやつはいるんだけれど、それだけで済まなそうな感じの匂いがする」
「すぐに戦争になりそうなの?」
「うーん……まあ、一年から二年くらいってところかな」
「すぐじゃない!」
「だーかーらーオーロラを連れて帰れないんでしょうー。あー学園へ来る時間も惜しいわ」

 戦争の話のはずなのに、レオの話し方だとまったく緊張感がなくなる。苦笑しながら考える。

「そうねぇ。一つオーロラと一緒にいる方法があるけれど、聞きたい?」
「え、何? 聞きたい聞きたい」
「ミリィが小さいころから男装してたの知っているでしょう? お兄さまたちと一緒にいたくて、男装して学園に来ていたのよ。男の子なら早い時期から見学ができるから。ただ講義は一緒に受けることになるけれど、オーロラがそれでもいいなら」
「……ミリィ天才!」
「きゃっ! ちょっと!」

 レオはいきなり私を抱き上げてくるくると回り出した。だから、私の方が年上だってば! 妹のように子ども扱いは止めて欲しい。でもつい笑ってしまう私も私であるが。レオは回るのを止めると、私を抱きあげたまま喜んでいる。

「そんな方法があるなんて知らなかった!」
「ふふ、喜んでくれてなにより。けれどオーロラに無理強いしては駄目よ?」
「当たり前じゃん! 俺がそんなことするわけないでしょ。ちゃんと誘導するから」
「……誘導?」

 聞き捨てならない言葉が。

「それって……」
「そういえばさ、どうして最近笑っているの?」
「え?」

 急に話変えたな。

「笑顔を奪う天恵がいるんでしょ。笑ってたら駄目じゃん」
「あ、それね! 犯人が分かったんですって。犯人って言っていいのか分からないけれど。もう卒業しているらしくて。アルトたちが言っていたわ」
「えー……そう。なんか中途半端だなぁ」
「何が?」
「いや、こっちの話。それが原因か。最近ミリィ目当ての男が増えてるよ」
「目当て?」
「天恵の犯人が分かったのはいいけれどさ、もう少し無表情でいたほうがいいんじゃないの」
「あ、うん。アルトたちもね、将来的に役に立つから無表情でいる練習するようにって。だから普段は無表情のつもりなんだけれど」
「たぶん、つもりなだけで笑っているんだよ。じゃないとこの増え方は尋常じゃない。今俺たち見ている男何人いると思う? 俺が気付いているだけでも五人はいる」

 レオは天恵を複数持っているので、そのどれかを使って探っているのだろう。

「よく分かるわね」
「当たり前じゃん。ちなみに俺は今嫉妬の視線を受けている」
「……ミリィを下ろせばいいのでは?」
「別に嫉妬の視線を俺が受ける役は大した話ではない。もし俺に何かしても返り討ちにするし」
「ほどほどにね?」

 レオは可愛い顔をして殺伐としているので、恐れられているのだ。もしレオに黒い感情を抱いたとしても、レオが怖くて実際に何かしようとするものはいないだろう。

「そこ! どうしてミリィを抱っこしているの!?」

 足音がしそうな勢いでモニカがエグゼを連れてやってくる。

「おはよう、モニカ」
「おはよう! ちょっと! 降ろしなさいよ!」
「えー、やだよ」
「やだよ、じゃないわよ! わたくしのミリィが減る!」
「減るって何? エグゼ、モニカが寂しいのですって。抱っこしてあげて」
「分かった」
「ちがっ!」

 冷静な顔でモニカを抱き上げるエグゼは、最近ちょいちょいスキンシップを教育中である。前はすごく抵抗していたモニカも、少し慣れてきたのか前ほど嫌がりはしない。

 抱き上げられたモニカの鼻をつんつんとする。

「これで一緒ね!」
「もう! 違うのに!」

 黒髪美女のモニカはぷんぷんしているところが可愛いのである。朝から和むひと時を楽しむのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。