七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 160話 ノエル視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 160話 ノエル視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」160話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 160話 ノエル視点

 時が遡ること夏休暇前。
 ノエル・ル・スヴェニアは帝都にある南公の邸宅の廊下を歩いていた。南公の娘ウェリーナの部屋に近づくと、物がぶつかる音や割れる音が聞こえてくる。きっとまた侍女たちに当たり散らしているんだろう。俺がウェリーナの部屋に入ると、侍女たちに手を挙げた。侍女たちはほっとしたように部屋を出て行く。

 ウェリーナは俺に気が付くと、持っていた枕を投げつけた。俺の胸にぶつかった枕から鳥の羽が飛び出す。

「ノエル! あの女を傷つけてきてくれたんでしょうね!?」
「今日は様子見だよ。言ったでしょう、物事には順序があるんだ」
「ふん! いつもそればっかり! ちっとも何も進まないじゃない!」

 興奮したウェリーナは、半分怒り半分涙目でこちらを見ている。ウェリーナに近づくと、俺に平手打ちをしようとするので、打たれてあげるのだ。それでウェリーナの気が済むなら安いものである。

「気が済んだ? 俺ならいくらでも打たれていいんだけれどね。ウェリーナの手が傷つくから、もう止めておこうか」

 ウェリーナを横抱きにすると、彼女はぎょっとした表情をした。

「何するのよ!」
「ガラスが飛び散っていて危ないでしょう。君の足が傷つく」

 比較的危険なものが散らばっていない窓の下にあるソファーに彼女を下す。灯りがいくつか消え、暗闇に近い部屋には、窓から月明りが落ちる。その月明りが彼女を照らし、髪が乱れた彼女はそれでもとても美しかった。

「何もかも上手くいかないわ! ノエルがやると言ったから、あの女の手出しを我慢しているのに! あの女はいつもいつも私から何もかもを奪っていく! もう我慢できない!」
「心配しないで。計画は進んでいる。確実に彼女を傷つけるために、外堀を埋めているところなんだ。急いては事を仕損じる。分かるね?」

 ウェリーナの綺麗な顔の横に手を添える。ああ、怒った顔も綺麗だといつも思う。

「……信用していいのね? あの女の息の根を止めるのよ」
「やだな、もちろん信用してくれていいよ。ただ少し相手が大物だから、慎重にならざるを得ないのは分かるでしょう」
「……早く、皇太子を私のものにしないといけないの」
「分かっているよ。でもウェリーナも覚えてる? 俺に言ったこと。ウェリーナの結婚相手は皇帝こそ相応しい。そうだったよね?」
「……そうよ。でも、まだそんなこと言っているの? ノエルが皇帝になれると?」

 嘲笑する彼女は、それでも美しいのだ。
 そんな彼女が俺は欲しい。彼女の手をすくうと、指先にキスをした。

「ウェリーナのためなら、俺は皇帝になってみせよう。だから約束は覚えていてほしい」
「……いいわ。本当に皇帝になれるのなら、ノエルと結婚してあげる」

 挑戦的に笑う彼女が綺麗で、それだけで幸せな気持ちになれる。
 この笑顔を俺のものにするためにも、確実に計画を実行していくのだ。

 ダルディエ公爵令嬢などどうでもいいけれど、ウェリーナがここ一年ほど急に気にしだして自ら手を出そうとしていたから俺がやると言ったまで。だからダルディエ公爵令嬢を攻撃するのを伺ってはいるけれど、それはただのついで。俺の今の目的は皇帝になるための計画を実行すること。
 
 俺は皇帝にならなければならない。そのために国がどうなろうと関係ない。ウェリーナさえ手に入れられるのなら。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。