七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 161話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 161話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」161話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 161話

 夏休みも後半になり、モニカとエグゼのトウエイワイド皇族姉弟がダルディエ領へやってきた。あいかわらず三人の忍を連れているが、彼らは姿を現してもらっている。うちにいる間はそういう約束なのだ。うちの家を探られては困るし、うちの影も巡回はしているが、私はそこまで気にしてはいない。モニカがわざわざうちを探る命令をするとも思えないからだ。

 モニカたちがやってきた時は、まだカイルとエメルはダルディエ領にいた。モニカとカイルは挨拶程度の面識しかないとは聞いていたけれど、まったく二人は話そうとしない。互いを無視しているのだ。なんでだ。

 エグゼはというと、猫のナナに夢中である。根っからの猫好きのようで、帝都のダルディエ邸に遊びに来る時から、ずっとナナを追いかけている。まあ、うちのナナ可愛いしね! この大きな猫はどこで買えるのかと聞かれたけれど、偶然拾ったということにしてある。私が化石から孵したとは言えない。ナナのことはまだアカリエル公爵にはばれていないのだ。ナナはいつも家では私の傍にいるし、私がいない時は私の部屋にずっといるので、騎士団で堂々と育てている恐竜とは違い、そう簡単には見つからないだろう。

 それにしても、モニカとカイルはまったく話そうとしないので、仕方なくトランプをすることにした。私とモニカとエグゼとカイルとエメルの五人である。人数が多いので、ババ抜きもなかなか終わらない。私も表情筋が鍛えられているので、昔のように表情でババがバレることもない。みんななかなかいい勝負なのだが、なぜかカイルとモニカが無言で敵意を露わにしている。せめて話をしてくれないか。緊張感のあるババ抜きと七並べ大会を開催し、どっと疲れるのだった。

 それからその日はモニカと一緒に温泉に入った。誰かと温泉に入るって、いいよね! 夜なので露天風呂では星が降ってきそうで綺麗である。

「モニカもカイルお兄さまもまったくしゃべらないんだもの。少しくらい仲良くなってくれると嬉しいのだけど」
「どうして皇太子なんかと仲良くならないといけないのよ。わたくしとミリィの愛の時間を取るなんて! 早く帝都に帰ればいいのに!」
「もう、そんなこと言わないで。モニカとカイルお兄さまって、すごく似合うなと思うのよ。モニカはグラルスティール帝国で結婚相手見つけるって言っていたでしょう? モニカは身長高いし、背の高いカイルお兄さまと並ぶととても素敵だもの」
「はあ? 何を言っているの、あいつは……」

 モニカは自分の手で自分の口を塞ぐと黙ってしまう。

「モニカ?」
「……ミリィって好きな人がいたり恋愛好きなわりに、鈍感よね」
「え?」
「いいえ、何でもないわ。一番脅威かと思ってたんだけれど、そうでもなさそうね」
「何が?」
「ううん、こっちの話。ミリィはずっとわたくしの愛を受けていればいいの!」
「なあに、それ」

 意味が分からないが笑ってしまう。ツンとして言うモニカが可愛い。あんなに怖かったウィタノスが、こんなにも好きになるとは思わなかった。モニカが可愛くて胸がぽかぽかするので、モニカに近づき頬にキスをする。

「な!」

 かあっと顔を赤らめるモニカも可愛い。

「ふふふ。ミリィもモニカが大好きよ。だからミリィにも返して?」

 私は自身の頬を指でつんつんとする。少し照れた顔のモニカだが、それでも頬にキスを返してくれた。
 きゃっきゃと温泉で騒ぎ、風呂から上がるとのぼせてしまっていた。その日は私の部屋でモニカと一緒に眠った。

 その次の日。
 敷地内の小川の近くでピクニックをしようと言っていたのだが、なぜか私はカイルとモニカに囲まれていた。

「ミリィはわたくしと手を繋いでいくの!」
「俺が抱き上げていくんだ」

 やっと会話したと思ったら、どうして言い争いが始まるんだ。モニカは私の手を握って離さないし、カイルは私の腰を離さない。助けてとエメルを見るが、いつものようにニコっと笑うだけだ。エグゼは一緒に行くナナに夢中である。

「もう、三人で手を繋いで行ったらいいんじゃないかしら」

 脱力気味に提案してみる。そして三人で手を繋いで歩き出した。
 敷地内にある小川はそう遠くない。小川近くの木陰に使用人たちがピクニックの準備をしてくれる。

(あ、カニがいる)

 相変わらず両手を繋がれ、互いにそっぽを向くモニカとカイル。現実逃避しようと小川の沢蟹を見て和んでみる。昔、この小川でカエルを捕まえて、ママを倒れさせた思い出が甦る。

 ピクニックの準備が完了し、敷き物の上に座った私の両隣には、またモニカとカイルが陣取っていた。私は二人に気にせず、サンドイッチをほおばる。うん、美味しい。料理長腕を上げたな。果物も食べやすい大きさに切ってある。桃が食べたいなと見ていると、モニカが桃を差し出してきた。

「はい、ミリィ、あーん」

 そう言われれば、当然食べるだろう。口を開けると、桃のフルーティーな味わいが広がる。

「美味しい」

 つい笑みがこぼれる。すると今度はカイルが皮の剥かれた葡萄を差し出してきた。
 もちろん葡萄も食べた。

「美味しい」

 桃も葡萄も好きだ。ふと気づくと、モニカとカイルがまた視線をバチバチに交差している。無言でやり合う姿につい笑ってしまう。

「仲が良いわねー」
「「良くない!」」

 そろった。やはり仲がいいだろう。
 葡萄を右手、桃を左手に取ると、モニカとカイルの口に近づける。

「はい、あーん」

 やはりそう言われると食べる二人である。なんだろうなー、二人は似ているし同族嫌悪みたいなものだろうか。

「き、昨日! わたくしミリィにキスしてもらったわ!」
「俺も先日してもらったが」

 今度は何が始まったんだ。少しは落ち着いて食べたい。桃を口に入れる。
 にらみ合っていた二人だが、モニカが急に私の頬にキスをして勝ち誇った顔をカイルに向けた。するとカイルは私を抱えて膝にのせ頬にキスをする。そしてまたにらみ合いが始まるのだ。

 勘弁してくれ。

「もう落ち着いてよ。まだ食事中でしょ」

 しぶしぶといった感じでカイルは地面に降ろしてくれた。まだにらみ合ってはいるが、食事中は大人しくしてくれた。モニカはともかく、カイルがすごく子供のようだ。

 それから二人はずっとにらみ合っていたけれど、明日はカイルとエメルは帝都へ戻るので今日は三人で寝るのだ。

「今日のカイルお兄さまは子供のようだったわね」

 ベッドに横になりながらくすくす笑うと、カイルは気まずそうな表情をした。

「ごめん。ミリィが取られると思ってつい」
「少し新鮮だったわ。カイルお兄さまって、小さいころから大人みたいだったもの」

 横ではエメルが苦笑していた。

「私もああいう場面は新鮮でしたよ。ソロソが見たら笑い死ぬかもしれませんね」

 カイルがムッとする。

「言うなよ」
「言いませんよ」

 カイルとエメルから頬におやすみのキスをもらう。

「おやすみ、ミリィ」
「おやすみ」

 それからすぐに寝落ちるのだった。
 次の日、カイルとエメルは帝都へ帰っていった。

 次の日からはモニカと遊んですごした。実はモニカ用の水着もジュードに頼んであった。兄たちやエグゼがいるところでは水着は着ないというので、モニカと二人で水着を着て湖で泳ぐ。私はあまり泳げないのだが、モニカは意外と上手だった。夏の湖はとにかく気持ちいいのだ。

 護衛を連れてダルディエ領の街へも行った。帝都ほどではないけれど、大きい街なので十分楽しめる。モニカもエグゼも観光を楽しんでくれたようだった。

 そしてあっという間に夏は過ぎ、私たちは帝都へ戻った。
 私は十八才になり、テイラー学園では六年生となった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。