七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 156話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 156話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」156話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 156話

 今日の添い寝担当はエメルである。久しぶりにカイルもやってきていて、私たちは風呂も入り、二人用のソファーに三人で座っていた。私はというとカイルの膝に座り、小腹が空いたので苺をつまんでいた。

「本当に驚いた。ミリィがウィタノスと親友になったというから」
「ふふ、驚かせてごめんね。でももう大丈夫。モニカはミリィを殺したりしないわ。はい、エメル、あーん」

 口を開けるエメルに苺を投入する。この苺美味しいな。自分も一口苺を食べる。

 モニカと親友になってから一ヶ月近くが経過していた。あれから何度もモニカとその弟エグゼはダルディエ邸に遊びに来ている。ちなみに、エグゼは私が皇子殿下と呼んでいたら、上から目線でモニカの親友だからエグゼと呼ばせてやる、と言っていたからそう呼ぶことにしたのだ。

「モニカってね、普段は強めの口調だし学園ではミリィとエグゼとしか話さないから、いつも遠巻きに見られるんだけど、実はすごく可愛いの。いつも仕方ないわね! って言いながらニコニコしてるんだから。はい、カイルお兄さま、あーん」
「それは、ミリィにだけの対応だと思いますよ」

 今度は口を開けるカイルに苺を投入していると、エメルが言った。

「先日、私がいなかった時にトウエイワイド皇女はここに泊まったと聞きましたよ」
「そうなの。さすがにエグゼは帰ってもらったんだけれど。やっぱり親友といえば、お泊り会でしょってなって。その時の添い寝がね、シオンだったの。三人で寝ればいいよね、って思ってたんだけれど、シオンもモニカも嫌がって」
「それはそうだろう……」

 カイルが苦笑している。

 モニカは約束通り、悪夢、つまり前世で死亡する夢を見ないようにしてくれた。そのお礼も兼ねたお泊り会だったのだが、私が添い寝されないと寝れないことに怒っていた。いくら悪夢を見なくなったとはいえ、十年以上兄たちと寝てきたのだ。急に一人で寝れるわけないのである。悪夢が原因ということを知ると、モニカはブツブツと文句を言いながらも、添い寝に関しては多くは口出ししなくなった。ただそれとシオンと三人で添い寝するのは違うという。シオンも嫌がるし、モニカとシオンは兄妹じゃないから嫌がるのかな、と思っていたら、それだけではなかった。

 本当の姉弟であるエグゼに対しても抱きしめられたり頬にキスしたり膝に乗せたりを拒絶、というより恥ずかしがりすぎるな、と思っていたら、どうやらトウエイワイド帝国では、兄妹間でも男女ではスキンシップをしないお国柄らしい。

 グラルスティール帝国では、恋人でなくても親しい間柄なら挨拶で頬にキスはするし、出会った時に抱きしめたりもする。恋人や夫婦なら、近くに他人がいようが口同士のキスもあたりまえ。男性が女性を横抱きに抱き上げたりも普通にある。
 しかしトウエイワイド帝国では、恋人同士だったとしても人前でキスはしない、手も繋がない、抱きしめたりもしない。姉弟でも、あったとしても頭を撫でるくらいらしい。

(何それ、寂しい)

 そう思うのは、育った環境が違うからであろう。私は抱きしめられるのも頬にキスされるのも膝に乗るのも、すごく温もりを感じられるので好きだ。兄からの愛を感じるし、そういう部分はグラルスティール帝国で育ってよかったなと思う。
 モニカも育った環境が違うことに気づいたようだ。私と兄たちのスキンシップにまたもやブツブツと文句を言っていたが、私がモニカに対してもスキンシップが多いのには満足そうだった。私は少しずつモニカとエグゼをスキンシップに触れさせていこうと思っている。まだ諦めないのだ。
 とはいえ、そんな環境で育ったモニカをシオンと一緒には寝させられないので、その日はシオンに謝って、モニカと二人で寝たのだ。モニカは私の寝つきの良さに驚いていた。せっかくのお泊り会で寝るのが早すぎ! と次の日怒っていたけれど、モニカの寝起きは可愛かったのを思い出す。

「カイルお兄さまはモニカとは話をしたことある?」
「挨拶程度だけどあるよ。ミリィの言うように、ニコニコしているイメージはないけれど」
「ふふ、笑っているところ見たら可愛くて好きになると思うわ。今度の夏休みは十日間くらいモニカたちもダルディエ領へ来る予定なの。カイルお兄さまもいつも通り来るのよね?」
「行くよ」
「だったらモニカたちに会えると思うわ」
「ふーん? 俺はミリィの敵でないなら、かまわないけれど」

 うーん、カイルはモニカに興味なしか。笑ったところを見たら、また変わってくると思うけれど。勝手にだけれど、カイルとモニカは美男美女で似合うと思っていた。二人がもし結婚すれば、モニカはグラルスティール帝国に残れるので、私の近くにいることができる。

(ま、焦ったらだめよね。こういうのは本人たちの気持ちもあるし)

 今度の夏休みで様子を見てみようと思う。

 それから三人でしばらく話をし、ベッドで仲良く就寝するのだった。

 数日後、テイラー学園の教室へモニカが朝やってくると、私を教室の端へ引っ張っていった。

「おはよう、モニカ。どうしたの?」
「おはよう! ミリィが言っていた、オキシパル伯爵を昨日見たのよ!」

 実はモニカには今片思いをしている相手オキシパル伯爵のことを教えたのだ。もう相手にどうこうしようとはしないだろう、という信頼があるからである。

「本当!? いいなぁ! 素敵だったでしょ?」
「どこがよ! あんな冷たそうな人! ミリィには合わないわ!」
「その冷たそうなところがいいんでしょう。かっこいいわ」
「駄目だ、そこだけはどうしても納得いかないわ……」
「そう? ちなみに、モニカだったら、どういった人が好きなの?」
「そうね……やっぱり権力持っていて、わたくしの言うことを聞いて跪く人がいいわ」
「なぜ跪く人がいいのよ……そっちの方が分からないのだけど」

 モニカとは男性の趣味は合わなさそうである。

「でも、モニカも好きな人を作りましょう。グラルスティール帝国の人と結婚してくれれば、ずっと一緒にいられるもの。ミリィの近くにいてくれるのでしょう?」
「そりゃあ近くにいますけど! どうしてグラルスティール帝国なの? トウエイワイド帝国じゃ駄目なの?」
「ミリィ、ブラコンだから。お兄さまたちと離れるの嫌なの」
「もう! ミリィはブラコン過ぎるのよ! まったく仕方ないわね、わたくしがこっちで結婚相手を見つけるわ」
「わーい! ミリィも協力するわね」
「モニカ!? 俺は認めないからね!?」

 実はずっとモニカの後ろにいたエグゼ。この姉弟はスキンシップこそ少ないものの、エグゼは立派なシスコンであることに気づいた。モニカ命のエグゼは、姉に結婚相手や恋人ができるのが嬉しくないようだった。

 こういうところは、うちとは違う。私が頼りないから、好きな人ができると兄たちは心配はするが、好きな人を作ったらだめとかは言ってはこない。年が離れていたり、貴族でなかったりすると反対はしてはくるけれど、兄たちは心配性である。

 モニカは私と一緒にいるようになって、よく笑う。相変わらず私以外には無視だが、モニカの笑顔を見て、顔を赤らめていたり、ぼーと見惚れたりしている男子がいるのである。わかるわかる。
 そこまで思って、はっとした。

「そういえば! モニカも笑ったら駄目だった!」
「急に何?」
「ミリィ、学園にいる間は無表情でしょう。そうしないと駄目なの」
「……うん?」
「トウエイワイド帝国には天恵ってある?」

 モニカの耳に口を近づけて、こそっと言う。

「天恵? 何かしら」

 天恵の説明をすると、モニカはああ、と納得したように頷いた。

「あるわね、天恵。トウエイワイド帝国では『星の力』って言うけれど。わたくしも持っているのよ」
「そうなの!?」
「でも、それがどうかしたの? 笑ったら駄目とか」
「ああ、それがね」

 双子から聞いた笑顔を奪う天恵の話をすると、モニカは眉を潜めた。

「星の力には、そういったものはないはずだけれど」
「え、でも、実際に笑顔を取られた人がいるのよ」
「おかしいわね……。とにかく、もう一度、双子の兄に確かめた方がいいわ。その話聞いてから、時間が経っているのでしょう?」
「そうね……もしかしたら、状況が変わっているかもしれないわよね。アルトたちに聞いてみるわ」

 確かに笑顔を奪う天恵の話を聞いてから一年近くは経っている。私も無表情に慣れたこともあり、すっかり忘れていたけれど。

 今日は寮から双子は帰ってくる日ではなかった。近衛騎士団へ行こうか行くまいか考えながら席に着くのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。