七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 152話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 152話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」152話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 152話

 社交界シーズンとなった。
 シーズン少し前にディアルドの結婚式があったため、両親はその後ずっと帝都にいた。ママと一緒にドレスを新調したりしているうちに、あっという間に日が過ぎ、本日の夜は宮廷舞踏会がある。

 宮廷舞踏会には私も参加するのだが、舞踏会のため同伴がいる。今回の同伴はシオンにお願いした。本人は行きたくなさそうだったのだが、シオン以外の兄たちはそれぞれ同伴がいて頼めなかったのだ。

 今日の私のドレスは濃い青にした。今回のドレスの長さは床までついて揃っている。毎回長さが揃っていないと飽きるし、見慣れてしまうためだ。アンにデザインしてもらったもので、大人っぽさに可愛らしさを混ぜてもらったドレスになっている。もちろんハイヒールを履いているが、最近ハイヒール人口がかなり増えたと思う。そこかしこにハイヒールを履いた令嬢方がいた。

 シオンと宮殿の会場を歩いていると、兄たちや両親の存在を確認する。それぞれ知人と言葉を交わしたりして忙しそうだ。私はというと、知り合いなどと会話しつつも、私が今好きなオキシパル伯爵を捜していた。ただ見つけてもいきなり話しかけるわけにはいかないので、縁戚だというアカリエル公爵家の誰かに紹介してもらいたいな、と考えていた。その前に一目オキシパル伯爵を見たいなと思うのだが、なかなか見つけることができない。もしかして今回の宮廷舞踏会には参加していないのだろうか。

(誰か探しているのか)
(うん、オキシパル伯爵をね)
(……ミリィ、突っ走るなよ? 見つけたなら、まずは俺に言えよ?)
(わかったわ)

 心の中で会話し、シオンを見て笑みを浮かべる。シオンはため息をつくだけだ。

 なかなか見つけることができないので、シオンにお願いして一曲ダンスを踊る。舞踏会ですものね。同伴として兄妹で参加はしても、普通は会場で別れて踊る相手を見つけに行くので、兄妹で踊る人は少ないけれど、私はシオンと踊るのでも十分楽しいのでいいのだ。シオンと踊り終わると、何人かに一曲どうですかと誘われるのだが、シオンが鋭い目線であしらっていた。さすがシオン、今はオキシパル伯爵以外の人に誘われても嬉しくないので、助かります。

 またオキシパル伯爵探しに戻り、会場をウロウロしていたところ、遠くにアカリエル公爵令息のノアを発見した。ノアに一度話しかけて、オキシパル伯爵が会場入りしているのか確認しようと思った時だった。

 心臓に何か電気が走ったような衝撃を感じた。ノアの近くに立つ、一人の長身の女性。黒の長い髪と菫色の瞳。異国の服を着た絶世の美女。

 ウィタノス。

 そうだ、あれはウィタノスだ。
 見たことのない女性なのに、すぐにそれが分かった。

(どうした?)

 急に立ち止まった私に、シオンは不思議そうに聞く。

 まだ、ウィタノスはこちらに気づいていない。そうだ、そろっと遠ざかれば、まだ大丈夫。
 動悸がする。手が震える。一歩一歩後ろへ下がる。

(ミリィ?)
(……ウィタノスが)
(何!? いるのか!?)

 スローモーションのようだった。ウィタノスがこちらを向いて、私を認めると、恍惚の笑みを浮かべた。

 ぶわっと毛が逆立った気がした。すぐさま踵を返す。足早に進むが足がもつれそうだった。シオンも一緒についてきてくれているが、シオンは後ろを見ながら警戒しているようだった。

 会場を出ると、長い廊下を進む。どこを歩いているのだろうか、出入り口ではないことは確かだが、とにかく宮殿を出てどこかに身を潜めなければ。……どこかってどこに?

 人の少なかった廊下を歩いているのは私とシオンだけだったが、やっと廊下を抜けようとした時に、心地いい声がやけに大きく響く。

「カルフィノス、久しぶりね。十七年ぶりかしら」

 声に振り向くと、廊下の端に立っていたのは絶世の美女ウィタノスと、長身のウィタノスよりさらに背の高い青年。

「今回は前回より早く見つけられたわね。すごく会いたかったのよ」
「……ウィタノス」
「やっと呼んでくれた! 今回は生まれた時から思い出してくれていたのでしょう? どうだった? 恐怖だった? 苦しかった?」

 一歩一歩ウィタノスがこちらへやってくる。美しく笑い、それは嬉しそうに。
 シオンがいつのまにか、どこからかナイフを出していた。剣などの武器を持って会場入りすることはできないはずなのだが。

「毎日私を思い出してくれた? 私でいっぱいになった?」
「……思い出したわ。ウィタノスがいつ来るのかと恐怖だった」
「そう! 嬉しいわ! 私もカルフィノスをいつも思っていた。今日会えるかしら? 明日会える? 会えた日のために、どうやって息の根を止めようか考えて、すごく楽しみにしていたのよ!」
「それ以上、こちらへ来るな」

 シオンが声を出すと、笑顔を引っ込めたウィタノスが足を止めてシオンを見た。

「邪魔しないでくれる? 感動の再会なのに」
「これ以上口を開けるな。一歩も前へ進むな」
「……あいつ邪魔ね。始末して」

 ウィタノスの声と共に、急に私の周りに三人の人が現れた。

「え……」

 黒装束の三人はシオンを狙っていた。

「いや! シオン!」

 シオンが殺される。その恐怖に叫んだ時、黒装束の三人がはじき返され、少し離れた地面に着地する。三人をはじき返したのはシオンと急に現れた二人の影。ダルディエ家の影だった。

「遅くなりました」
「いいや、いい頃合いだった!」

 どうして急に影が。シオンは私を横抱きにすると、その場を走り出した。

(シオン!)
(大丈夫だ、影が対処する)

 遠くで金物がぶつかり合う音が聞こえる。その音から離れることに、心の底からほっとし、そして涙が溢れた。

 やはり来た。まさかこんな場所で会うなんて。

 それから馬車でダルディエ邸へ戻ると、ダルディエ邸の警備は強化された。
 影たちが無事戻ってきた。彼らによると、黒装束の三人と戦っている最中にウィタノスと青年は消え、それを確認したら黒装束の三人も消えたという。黒装束の三人は影と似た存在だと言っていた。

 ダルディエ家の影は、私がウィタノスがいるとシオンに伝えた時に、シオンがすぐに天恵で影を呼び出したのだという。

 ウィタノスとの邂逅に動揺して、その日はなかなか寝られなかった。どうすればいいのか、何も思いつきもしなかった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。