七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 149話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 149話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」149話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 149話

 とある日の夜。兄たちを私の部屋に集め、アンに作ってもらったドレスの発表会である。エメルとカイルは来られないかもと言っていたけれど、私が準備が整う数分前に到着して待っていてくれていた。

「お嬢様の準備が整いました」

 侍女カナンの声かけにより、私は堂々と部屋の奥から登場した。
 今日のドレスは黒のレースが魅力の真っ赤で豪奢なドレスである。普段は胸元を開けるのは恥ずかしいのでしないが、今日は兄たちだけなので、胸も大胆に上が見えている。髪は綺麗にゆるゆると巻き、化粧は濃い目で真っ赤な唇がポイントだ。そして極めつけはスカートからちらりと覗く真っ赤なハイヒールである。
 いつもとはまったく違う衣装に、兄たちは呆然としていた。そして手元には羽がキレイな扇子。

「アナン!」

 たたたとアナンがやってきて、私の前に片膝をついた。

「この世で一番美しいのは誰?」
「それはもちろんお嬢様でございます」
「そのとおりよ! おほほほほほほ! 仕方ないわね、きちんと言えた褒美に踏んであげるわ!」

 今度はアナンが後ろを向き、四つん這いになる。
 その背中に勢いよく、と見せかけて、踏む直前にゆるっと背中にハイヒールを乗せ、高飛車に笑ってみせる。

「あははははは!」

 双子は大爆笑である。ディアルドとジュードは唖然としていて、シオンはいつもと同じ表情、エメルは苦笑し、カイルは口に手をやっていた。

「何それ! 可愛いー!」
「似合ってる似合ってる! まさか劇が始まるとは思わなかったよ」
「えへへ! どうかな! 悪役令嬢っぽいかな!」
「確かに悪役っぽいね! 俺も踏まれたい!」

 双子は大絶賛だが、ディアルドとジュードの視線はアナンに向いていた。

「何やっている?」
「お嬢の命令で仕方なく。俺が好きでやっているように見えます?」
「もう! ディアルド、ジュード、アナンを責めないで! ミリィが嫌がるアナンにお願いしたんだから。それよりも! 劇は置いておいて、どうかなドレス。大人っぽい?」

 ジト目でアナンを見ていたディアルドが、仕切りなおすような表情をした。

「そういう濃い色のドレスも似合うよ、ミリィ」
「うん、最初はびっくりしたけれど、すごく似合ってる。アンが取り憑かれたように仕立ててたけれど、これのことだったんだね」

 確かに、普段は背伸びしすぎて痛いイメージになるのが怖いので、濃い目のドレスはあまり着ていないのだ。評判もよさそうなので、今度濃い目の色でいくつか仕立ててもらおう。

「エメルとカイルお兄さまはどう思った?」
「とても似合ってますよ。いつもは可憐ですけれど、今日は妖艶ですね。すごく綺麗です」
「うん、俺もすごく似合っていると思う」

 カイルは少し目をそらし、若干頬が赤いような? 喜んでくれているんだな、うん。
 それからいつも通りのシオンの側に行くと、シオンの膝に座った。

「シオンだけいつもの顔だわ」
「ミリィはいつもどおりだから」
「……いつもどおり可愛いってこと?」
「うん」

 口下手なシオンにきゅんとして頬に口づけすると、真っ赤な口紅の印がついた。

「あ、やっちゃった」
「ミリィ、俺にもやって!」
「いいよー!」

 アルトとバルトにも頬に口紅の印を付ける。

「俺もやってって言うなら、今ですよ」

 そんなエメルの声は私には聞こえず、衣装直しのために席を外した。
 今度は準備に時間がかからないものなので、兄たちはワインを飲みながら談笑しつつ待つ。

「お嬢様の準備が整いました」

 またも侍女カナンの声掛けにより、私は堂々と部屋の奥から登場した。
 今度のドレスは前世のドレスをイメージして作った。お葬式以外で真っ黒のドレスは着ないものだが、今回は真っ黒のスカートに膨らみのないタイトなドレスで、胸元も上が見えていて、そして極めつけは足元のスリットである。引きずるようなタイトなドレスは、歩くとちらりと左の太ももから下の足が見えるのだ。足を見せすぎることは恥ずかしい事だとされている現代では、外で着ることのできないドレスである。緩く巻いた髪は首の右から前に流し、ゆっくりと歩いて、兄たちの中央に座っていたディアルドの膝に座る。わざとスリットが綺麗に見えるように座り、ディアルドの首に手を回すと、頬にキスをした。

「どう? ディアルド、ミリィに落とされたいっていう気持ちになった?」

 しんとしていたのに、急にいつもの口調で私が話すものだから、ディアルドは盛大にため息をついた。

「ミリィ、もう少し恥じらいを持って」
「うふふ! 言うと思った! でもディアルドは文句言えないんだよー」
「どうして」
「ユフィーナ様にも色違いで結婚祝いの贈り物で作ったんだよ! ディアルド、絶対悩殺されるから! 楽しみでしょ!」
「……」
「ユフィーナ様が着ているの見たくない?」
「……」
「絶対綺麗よ、妖艶よ」
「……もらうけれど」
「そうこなくっちゃ!」

 よし、まずはディアルドが落ちた。と、急に体が浮いたかと思うと、バルトが楽しそうに笑っていた。

「次は俺のところにおいで! すごく妖艶すぎて、もう俺の心臓わしづかみだよ」
「バルトの彼女にも一着いかが?」
「もらうもらう」
「ミリィ? 俺はこんな服作ったなんて聞いてないからね!」
「ジュード、これはさっきのドレスのおまけなの。外で着れないような服は旦那様だけが見れる特権だもの。ユフィーナさまに何かいいのないかな、って思いついたやつなの。ディアルド喜んでるでしょ」
「兄上! 何喜んでるんですか! ミリィの足見てください、こんなところまで見えて!」
「……俺、何でジュードに怒られているんだ?」
「ジュード兄上、いいじゃん、ミリィすごく可愛いでしょ」

 バルトに抱かれたまま、バルトの首の後ろを見ると、兄たちがわあわあ言っている横でいつも通りのシオンがいた。

「シオンはどう思った?」
「いつもどおり」
「可愛い?」
「うん」
「ありがと」

 兄たちがいつもどおり褒めてくれるので嬉しい。ふとエメルとカイルを見ると、エメルは少し困った顔をしていて、カイルは前を向いてぼーっとしているように見える。やはり仕事が忙しくて疲れているのだろう。忙しいのにも関わらず、駆けつけてくれたエメルとカイルには感謝しかない。
 バルトに降ろしてもらうと、エメルとカイルに近づいた。ぼーとしているカイルの顔を両手で挟むと上を向かせた。

「カイルお兄さま、疲れちゃった? 大丈夫?」
「……うん」

 すぐに下を向くカイルに、ふとエメルを見ると、ただ笑顔が返ってくる。だからエメルの笑顔は何も通じないのだが。カイルの前にしゃがんで顔を覗き込むと、少し顔が赤くなっていた。

「カイルお兄さま、熱があるんじゃないかしら」

 おでこに手をやるが、うーん、熱はなさそうだけれど。一瞬目は合うのだが、やはり少し逸らされてしまう。

「カイルさまは疲れているようですね。一度私の部屋で休みましょう」
「……そうだな」

 カイルとエメルは部屋を出ていく。
 やはり体調が悪いのか。いつも元気なところしか見たことがないため、心配になる。

「ミリィ、こちらにおいで」

 ジュードに呼ばれ、カイルが気になりながらも兄たちのところへ向かう。

「カイルお兄さま、大丈夫かしら? 働きすぎだと思うのだけど」
「たぶんそういうことじゃないと思うけどね」
「アルト、何か知ってるの?」
「想像はつくよ。シオン」

 ソファーに座ったままだったシオンが立ち上がり、私を抱き上げると、またソファーに座った。そしてシオンが私の両耳を塞ぐ。

「え? 何? 聞こえないよ?」

 どうした急に。こういう場合は、たいてい私の後ろで兄会議が始まるのだ。私に聞かれたくない話なのかと、少しむくれる気持ちになる。仕方ないので、シオンの顔で遊んで時間を潰す。

 シオンはパパ譲りの目つきの悪い瞳なのに、イケメンの顔は綺麗である。瞳はママ似の神瞳でキラキラと光っている。よく見るとまつ毛も長くて、くるりと上を向いている。目を少し引っ張ると、びにょんと伸びて愛嬌が出る。ほっぺをひっぱると少しまぬけになるし、笑わない口角を引っ張ると疑似的に笑っているように見える。怒りもせず私にされるがままのシオンは、まだ私の耳を塞いでいる。

 それにしても、今回の二回目のドレスだが、やはり兄の反応は足だった。胸には誰も反応なし。貴婦人のドレスは、胸は大胆に開いているものが流行っているからか、みんな胸を強調しているし、右見ても左見ても見える胸より、隠れている足の方が興味が出やすいのだなと改めて思う。私の胸もなかなか大きくなってきたし、いずれは武器になるかとまだ育てる気満々であるが、やはり足もケアが必要だろうか。足ってどうやったら綺麗に見えるようになるのだろうか。腹筋は毎日鍛えているけれど、筋肉が付きにくいのか、まったく割れない。腹筋バキバキのシオンに教えて貰っているはずなのに。
 兄たちの会話が聞こえなくて暇なので、このようにどうでもいいことを考えていた時。

「あれは落ちてるでしょう」
「本人は気づいているのか?」
「どうですかね? ただの兄妹愛だと勘違いしている可能性もあり」
「ミリィの可愛さには落ちるのも仕方ないとしても、どうにかしないといけないよね」
「どうにかとは? 逆につつくと加速するんじゃないのか?」
「確かに。ミリィはまったく気づいてないしね。俺らにするみたいにカイルお兄さま大好き! だもん。あれはねぇ、兄妹じゃなかったら落ちるよねぇ」
「……仕方ない、カイルさまには婚約者でも作ってもらおうか」
「ああ、それが手っ取り早い。今ならミリィは応援するよ! って言うと思うし」
「そうだね。ただあの女性に対して鉄壁のカイルさまが落ちるような人います?」
「うーん、ミリィに似ている人ってことか? いないんじゃないか」
「ミリィともしばらく会わすの止めるとか」
「ミリィが会いに行くの止めると思うか?」
「……ミリィは自由にさせてないと可哀そうだしなぁ。俺、そういう意地悪は無理」
「俺も無理だが。そもそも会わせないなど無理だろう。カイルさまが会いに来るんだから」
「今日の添い寝はエメルでしたっけ? ということはカイルさまいるじゃないですか」
「さっきの赤くなった顔見ただろう。ミリィに何かするとは思えないが」
「それはそうですよ、ミリィに兄とも思ってもらえなくなったら、ミリィに抱き着いてももらえないことくらいは分かるでしょう」
「部屋にはエメルもいるからな」
「俺、知り合いの皇太子狙いの子、何人か夜会や舞踏会で接触させます」
「俺も。あとはまだ皇太子に興味のない子でも結婚相手探している子も接触させよう」

 まさかこんな話をされているとは思ってもおらず、のんきに足を鍛えることを考えていたのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。