七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 148話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 148話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」148話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 148話

 学園に通学すると、やはり私とカイルの話が噂になっていた。教室に入ったとたん、女生徒が一斉に集まってきたのだ。

「ミリディアナさま! 先日皇太子殿下に抱き上げられていたというのは、本当ですの!」

 みな頬を上気させて、なにやら可愛いのだが。

「え、ええ。体調が悪くて、心配させてしまったようですの。カイルお兄さまに限らず、うちの兄たちはいつも心配するとわたくしを抱き上げる癖があって」

 さりげなく、心配性なのはカイルだけではないと言ってみる。カイルだけに話が集中すると、余計な噂が立ちそうだからだ。

「そういえば、先日来られていたアルトさまとバルトさまもミリディアナさまを抱きしめられていましたわね! あんな素敵なお兄さまに愛されて、羨ましいですわ!」
「本当に! わたくしのお兄さまなんて、全然私の言うこと聞いてくれなくて」
「うちもよ! それどころか、ミリディアナさまと話したいなんて、私に紹介しろなんて言うのよ! いつもわたくしのことなんて二の次で」

 うちの兄たちに比べると、愚痴がたくさん出てくるようである。

「わたくしが末っ子ですし頼りないと思うようですわ。恥ずかしい限りですけれど」

 うちの兄たちが自分の兄だったら、という妄想話で盛り上がりだした。よしよし、これでカイルも兄たちもただのシスコンが印象付けられただろうか。うちはブラコンシスコンを隠していないので、どこでも兄たちに甘えられるよう、兄たちのシスコンをみんなに印象付けておきたいという思惑は達成できそうである。

 もうすぐ季節も冬で、学園生活は順調であった。
 先日の植木鉢の件は解決したとアルトから聞いた。

 アルトによると、植木鉢の犯人は六年生の男子生徒で、その糸を引いていたのはイリス・ル・フラルバル伯爵令嬢だったという。私に対しあることないこと裏で陰口を言っていた人ですね。あまりにも分かりやすい犯人だったな、とは思う。実行犯の男子生徒はイリス嬢のことが好きだったらしく、私を怖がらせて学園を辞めさせることができれば、一緒に観劇に行ってあげると言われたらしい。ご褒美が観劇だけとは、そんなもので動く男子生徒に呆れるが、確かにイリス嬢は美人であるし、それだけ好きだったのだろう。ただ植木鉢を落とすのは当たれば命が危ない。さすがに男子生徒はやることが酷いので、当然退学となった。

 そしてイリス・ル・フラルバル伯爵令嬢の私への嫌がらせであるが、元をたどれば、まさかのパパとママが原因だった。イリス嬢の母は元はパパの婚約者候補だったという。結婚前のパパは当時、お見合い話がひっきりなしだった。その中でもイリス嬢の母を含む三名が婚約者候補として相応しいと、社交界でも話題に上っていたという。ところが、最終的にパパは婚約者候補の全員を断った。この時点でママとパパは出会ってもいなかったので、ママが原因ではない。ところが、その婚約者候補に断りを入れた一か月後、パパはママと出会い恋をした。どういうわけか、イリス嬢の母はママが原因で断られたのだと、いまだにママを恨んでいるという。

 イリス嬢はイリス母に私には絶対負けるなと言われ続けて育ったらしい。またイリス嬢の母は娘を皇太子の婚約者にするべく動いていた。ところが、憎いママの娘が、従兄妹とはいえ、まさかの皇太子と仲が良いとは思っていなかったようだ。いくら縁戚でも付き合いの浅い縁戚は多いからだろう。ただそこからママ憎しに拍車がかかり、それはそれはイリス嬢の母からのプレッシャーがイリス嬢の肩にますますかかった。イリス嬢はイリス嬢で美人だし自分に自信があるものだから、私を初めて見た時に大したことない娘だと思っていたらしい。ところが珍しくも皇太子が社交界デビューの私と踊ったことで、敵意に火がついた。そこから私に対する嫌がらせが始まったとのことだった。

 ただ植木鉢の犯人を捜すのは難しいだろうと思っていたのに、よく分かったものだと思った。しかしよくよく話を聞いていると、私が気づかなかっただけで植木鉢以外にも男子生徒から攻撃があったという。足を引っかけられそうになったり、食堂で飲み物をかけられそうになったり、階段から落とされそうになったりしていたという。そんな記憶はまったくないのだが、全てアナンが未然に塞いでいたという。それをアナンは私ではなく兄たちにだけ報告したと言っていたから、少しだけムッとしてしまったが。できれば私にも報告してほしかったのだが、「お嬢は注意力散漫ですから。いつもぽわんとしていたほうが、お嬢らしいでしょ。今足をひっかけられましたよ、なんて言ったら不安がるの分かっているし」と言い切りやがった。私への悪口じゃないか!? と思うのだが、隣でカナンがうんうんと頷いていたので、これ以上突っ込んでも二対一で負けてしまうので無言を貫いたが。とにかく、そういった余罪から男子生徒が割り出せたという。

 ちなみに、イリス嬢は自主退学となった。イリス嬢は男子生徒が勝手にやったと言い張っていたらしいが、お兄さまたちが裏で色々と動いたようですね、イリス嬢の父フランバル伯爵から、イリス嬢を退学とし今後一切社交界には出さないから許してくれ、と懇願されたらしい。兄よ、何をやったんだ。聞いても兄たちは笑うだけなので、これ以上聞くのは止めました。

 とにかく、イリス嬢と植木鉢の件は解決し、ほっとした。

 そして今日は夜会である。ジュードと同じ夜会に招待されたので、一緒にやってきたのだ。前半はジュードと共に行動していたけれど、途中から分かれて過ごすこととなった。ウィタノスがいなさそうなのを確認できたからである。学園での知り合いや以前お茶会で一緒になった夫人などと話し、また人脈を広げたものの、少し気疲れして一人デザートがたくさん置いてあるコーナーへやってきた。自由にお取りください、というやつである。

「ワイン?」

 デザートコーナーなのに、ワインが置いてある。ワイングラス自体は小さいので、一口味見用なのだろうか。

「いいえ、これはデザートですよ」

 横から話しかけられ顔を向けると、私より少し年上と思われる青年が立っていた。ワインと思ったデザートを取り、スプーンですくって見せる。

「ほら。デザートでしょう。南の国が名産の赤黒い果肉の果物を使ったものですよ。ワインのように見える演出で、ワイングラスに入れているようです。さっぱりしていて美味しいですよ」
「そうなのですね、いただいてみますわ」

 デザートを取り一口いただいた。一見ワインのようなのに、さっぱりと爽やかな味のゼリーだった。

「ん! 美味しいわ」
「そうでしょう。こっちにある丸いものも美味しいですよ」
「そちらもいただきますわ!」

 茶色くて丸いデザートは、一口サイズで、食べると見た目とは違い、チーズの風味がする。これも美味しいのだ。つい笑みがこぼれていると、青年がくすくすと笑っていた。

「ああ、失礼しました。とても可愛らしくていらっしゃるので。ノエル・ル・スヴェニアと申します。男爵位をいただいております」
「ミリディアナ・ルカルエム・ル・ダルディエでございます。甘いものがお好きなんですか?」
「そうなんですよ。私はお酒よりはこういった甘いものが大好きで。もしまだ余裕がおありなら、こっちのケーキも美味しいですからいかがですか? 酸味と甘さが絶妙なんですよ」
「いただきますわ!」

 スヴェニア男爵は本当にデザートに目がないようで、男爵のすすめるデザートはどれも美味しかった。デザートの話で盛り上がって女友達と会話しているようで楽しい。

「ミリィ」
「ジュード」
「盛り上がっているようだね。そろそろ帰ろうかと思うのだけど」
「ええ、分かりましたわ。スヴェニア男爵、楽しいお時間をありがとうございました」
「こちらこそ。また今度、甘いお菓子の話をしましょう」
「ええ、ぜひ!」

 笑って別れてジュードの腕に手を絡ませる。

「あれが噂のミリディアナ嬢か。可愛らしいな。だけど俺の姫ほどじゃない」

 うっすらと笑みを浮かべ、私が見えなくなるまでスヴェニア男爵が見ながら独り言を呟いていることなど私は知る由もなかった。

 馬車にジュードと乗り込むと、ジュードの肩に頭を乗せた。

「疲れた?」
「うん、少しね。でも最後のスヴェニア男爵のデザートの話は楽しかったわ」
「スヴェニア男爵ね……聞いたことないな」
「そうなの? あ、そういえば、夜会の最初にジュードが紹介してくれたオクスロード伯爵って、ジュードの恋人でしょう!」

 オクスロード伯爵は国でも数少ない女伯爵である。ジュードと同じ位の年齢か少し上くらいだろう。

「……ミリィはそういうの、鋭いね……」
「やっぱり! ジュードの外行きの顔が若干崩れてたもん。オクスロード伯爵って素敵よね、さっぱりした物言いとか考え方もしっかりしていて。ジュードにすごく似合っていると思う」
「ありがとう」
「結婚は考えているの?」
「うーん、俺も彼女も爵位があるからね。考え中だよ」

 ジュードはパパの持つ従属貴族の称号を一つもらい、キャメロン伯爵と名乗っているのだ。ようはダルディエ公爵家の分家のようなイメージです。パパはダルディエ公爵だけれど、他にも複数の爵位を持っているのである。

「そうなのね。ジュードがどんな選択をしても、ミリィは応援しているからね」
「ありがとう。そういえば、アンが例のドレスが仕上がったって言っていたよ」
「本当!? やったあ! じゃあ、お兄さまたち呼んでお披露目会しなきゃ」
「すごいドレスができたって、アン興奮していたよ。俺は出来上がりが怖いのだけど」
「うっふっふ。楽しみにしていてね! それに、一つはユフィーナさまへの結婚の贈り物も含んでいるの。きっとディアルド喜ぶと思うのよね!」
「贈り物? そのようなもの依頼していた?」
「うふふふふ。お楽しみに」

 今度の初春、ディアルドとユフィーナの結婚式が控えているのだ。ウェディングドレスを作る際にドレスの案を見せてもらったけれど、清楚なユフィーナにとても似合っていて綺麗だった。結婚式が楽しみだ。

 その前に、兄たちへドレスの発表会である。これはただ私が着たいものをアンに遊びで作ってもらったものだが、これがアンもノリノリで楽しんでくれたようだ。アンは現在人気の仕立て屋であり忙しいため、時間ができてからでいいと言ったのに、もう作ってくれたとは。このドレスの出番は兄の前で発表するだけしかないのに、アンはデザインしたり仕立てたりが本当に好きなようだ。

 今私が帝都にいるからか、普段ダルディエ領にいる数名の兄たちも全員帝都にいる。兄たちも多忙なので、全員そろっての発表会は無理かもしれないが、できるだけみんなのスケジュールが合うところを捜そう。

 うきうきと計画を立てながら、邸宅へ帰るのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。