七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 147話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 147話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」147話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 147話

 社交界デビューを果たしてからというもの、舞踏会や夜会、お茶会やサロンなどの招待状が毎日のように届いていた。守ってくれる兄たちのいた社交界デビューの舞踏会と違い、一人で参加しなければならない招待には、正直どこにウィタノスがいるのか分からない以上、軽く参加するわけにもいかない。ただ何も参加しないのも、と思っていると、ママがまだ帝都にいるうちに一緒にお茶会に出てくれるというので参加した。本来なら秋はダルディエ領にいるパパとママだが、私の社交界デビューのために帝都に残っていたからである。

 お茶会はママの友人主催のもので十名ほどで開催された。私以外は結婚されている方たちであったけれど、ママの友人なだけあってみんな優しく、話も盛り上がり楽しめた。話題にはやはりハイヒールやドレスの件も上り、夫人方はみなすでに注文したと言っていた。

 お茶会が終わってしばらくしてパパとママはダルディエ領へ戻った。相変わらず招待状は届いている。社交界シーズンでもないのに、時期外れでも貴族たちの社交には暇がない。

 先日、同学年の令嬢にテイラー学園の生徒だけが参加者となるお茶会に誘われた。ルーカスも行くというし、海外の珍しいお菓子を取り寄せていると聞いて興味が出たため、私も参加することにした。お茶会のお菓子は確かに食べたことのないもので、すごく興味深かった。お腹を壊すといけないので大量に食べることはなかったけれど、つい主催者の令嬢に色々と質問してしまった。それから同学年の男子生徒に話しかけられたため、一緒に話していたら、どういうわけか手の甲にキスされてしまった。熱心に見つめてくるし普段の彼とは違って気持ち悪……いや、戸惑ったけれどルーカスがさり気なく助けてくれた。兄たちなど親しい人でない人にキスされても嬉しくもなんともないことが分かった。

「大丈夫か? 悪かった、気づくのが遅れて」
「ううん、助けてくれてありがとう」

 そう言いながらルーカスの袖で、キスされた手の甲をふいた。

「おい、俺のでふくなよ」
「だって気持ち悪いんだもの。大丈夫、今は誰も見てないから」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけど。アナンのでふけばいいのに」
「俺は結構です」
「俺も結構なんだけどね!?」

 そんな感じでお茶会にもほとんどいい思い出がなくなったため、その後は参加を見送っている。

 先日ティアママに注文されたハイヒールが一足出来上がり、先に一足だけ持っていくというジュードに付いてきた。ティアママが履いているところを見たかったからだが、さすがティアママ、すごく似合っていた。ハイヒールで歩く練習も必要なので、次の夜会までに練習すると言っていた。

 それから別件で他の宮殿に用事があるジュードと途中まで一緒に行き、ジュードと別れ、護衛のアナンだけ連れて私は秋の花が満開という宮殿に足を運んだ。色とりどりのコスモスが綺麗に咲いていて、私のように花を見に来ている女性が多い。日よけのために傘を差しながら、あまりにも綺麗なので前世の頃だったら写真を撮っているな、と思いつつ、脳裏にその綺麗な光景を焼き付けた。

「アナン帰りましょうか。少しお腹が空いてきたわ。何所かに寄ってお茶をするのもいいわね」
「街に出ますか」
「そうしましょう」

 そんな話をしている時だった。私のように傘を差した女性が五人、私の行く手を阻んだ。見た目は私よりは少し年上の女性たちだった。

「ごきげんよう。ダルディエ公爵令嬢とお見受けしますわ。不躾に失礼しますわね。わたくしシエラ・ル・クロウと申します。少しお話が聞こえたものですから。これからわたくしたち、お茶を楽しもうと思っておりますの。もしよろしければ、ぜひご一緒いたしませんか? ダルディエ公爵令嬢とは色々とお話させていただきたいと思っておりましたの」

 貴族のルールはどうした。なぜ知り合いでもない人に急に話しかけられ、一緒にお茶をしなければならないのだ。それに五人の女性は、私を獲物にしようとでも言うような表情をしている。つい眉を潜めてしまう。

「わたくしは結構です。失礼しますわ」
「そうおっしゃらず。ダルディエ公爵令嬢はお茶会といったものにはほとんど参加されないと聞いております。それではご友人もいらっしゃらないのではないかと思って。わたくしたちが色々と教えて差し上げますわ」

 それは、あなたたちにイジメられろとでも言っているのか。いつのまにか私たちの周りには、好奇心で集まっている女性が増えていた。この成り行きを楽しみたいのだろう。さてどうしようか。

「結構だと言っているでしょう。しつこく誘うのは失礼だとは思わなくて? そんなことも分からない方々が、わたくしに何を教えようというの?」

 シエラ・ル・クロウの眉がピクリと動いたが、笑みは崩れていない。

「あら、お教えできそうなことはたくさんありそうでしてよ。今少し話をしただけでも足りな……」
「何事だ」

 シエラ・ル・クロウの話す言葉を遮り、宮殿の中からカイルとエメルとソロソが護衛を連れてやってきた。皇太子が現れたことに驚いた女性たちが、一斉にカイルにお辞儀をする。私もカイルにお辞儀をすると口を開いた。

「カイルお兄さま」
「こんなところでどうしたんだ? ん、少し顔色が悪くないか?」
「お花を見てましたの。少し歩き過ぎたのかもしれませんね、体調が悪いわけではありませんわ」

 カイルは眉をひそめ、ちらりと五人の女性を見た。そしていきなり私を抱き上げた。

「カイルお兄さま!?」
「顔色が悪いから、これから体調が悪くなるかもしれないだろう。心配だからね。ああ、それと、そこの君」
「は、はい!」

 カイルに話しかけられたシエラ・ル・クロウは、ビクっとして返事をした。

「顔色の悪いミリディアナ嬢を引き留めていなかったか? 何の用事だ」
「わ、わたくしは、お茶をぜひご一緒にと……」
「お茶? ミリィ、知り合いなのか」
「いいえ」
「知り合いでもなく不躾にお茶に誘うとは失礼だろう」
「も、申し訳ありません」
「さあ行こう」

 不機嫌そうに眉を寄せたカイルに、青い顔で答えるシエラ・ル・クロウ。その震える彼女を置き、唖然とする周りの女性たちに見向きもせず、カイルは私を抱き上げたまま進んでいく。

「カイルお兄さま、ありがとう。もう大丈夫だから降ろして?」
「顔色が悪いと言っただろう」
「ええ? 本当?」

 エメルを見るとエメルも頷く。

「少し青白いですよ。今日は食事はしましたか?」
「したわ。それに、これから街にお茶に行こうとしてたの。そこを呼び止められて」
「ああいう輩は掃いて捨てるほどいる。いちいち構わなくていい」

 構いたいわけじゃないんだけどね、ああいう女性の集団は面倒である。
 結局、カイルは皇太子宮まで私を抱いたまま移動し、色んな人に見られては驚愕されてしまった。これはまた噂になるな、と苦笑してしまう。しかし少し糖分が足りてなかったのか、皇太子宮に到着するころにはフラッっとしてしまっていたので、兄たちの私の顔色で体調を量る力はすごいなと思う。

 皇太子宮では急きょお茶とお菓子で休憩をすることになった。

「夜会やお茶会の誘いが来ていると聞いているけれど。どこかに出席する予定は?」
「お茶会はこの前出席したんだけれど、もうしばらく行かないわ。どれかの夜会には一度出たいとは思うの。今ジュードと一緒に行けるよう調整していてね。夜会は同伴がいらないとは言っても、まだ一人では心配で」
「夜会か……」

 カイルが思案顔をするが、ソロソが口を開く。

「だめですよ、カイルさま。今色々と仕事詰まってますからね」
「……分かっている。ミリィ、ジュードから離れては駄目だよ」
「うん、できる限りそうするね」

 カイルは今海外から王族が訪問するとかで忙しいとエメルから聞いている。
 私も本来であれば夜会くらいは一人で出席できないといけないのだ。ほとほと兄たちに甘えすぎているな、と思う今日この頃だった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。